民主主義はこわれたのか?   (42 下村祥介)

 (”ザンバからの電話” について)

「民主主議がこわれた」のではなく、民主主義制度のもつ「欠陥」が露呈したということですかね。トランプ前大統領が法を無視しても許されるというのであれば、法治国家とは言えないので「民主主義がこわれた」とも言えそうですが・・・。

民主主義が最高(理想)の政治制度ではないと言われるのは、一般国民にとってはものごとの本質を見極めることが極めて難しく、根拠のない噂や表面的なイメージ、群集心理などによって国民の多くが妄動し、誤った選択をしてしまうことが多々あるからでしょう(ヒットラー政権の誕生の経緯やマッカーシー旋風などもそうですかね)。一国の政治レベルは国民のレベル以上にはならない、と言われるのもこの辺から来ているのでしょう。

自分は民主主義国家にいるから自由だし大丈夫だ、自分の意思でものごとを決め判断しているからといっても、気づかぬうちに洗脳され見えざる妖怪にあやつられているということもあり得ます。民主主義制度に内在する諸欠陥を補う有効な手立てが実現するより先にAIによるフェイク映像などが先行していくこれからの時代が怖いですね。

(追補) (3/13)の日経新聞によれば世界の民主主義が退潮しているとのこと。以下、記事を要約する.

『2011年ごろから世界の民主主義指数が低下し続けている(スウェーデン独立調査機関V-Dem研究所による調査結果)。集計対象179か国・地域を人口でみると民主主義陣営は29%(23億人)、権威主義陣営は71%(57億人)。権威主義陣営は10年前の48%から大きく勢力を伸ばしている。民主主義指数は、公正な選挙、三権分立、法の下での平等、表現・結社の自由などで、国・地域の数で見ると民主主義陣営は91、権威主義陣営は88。今年は60か国・地域で選挙が行われるが、このうち31の国・地域では民主主義が後退している中での選挙となる。』

この研究所のリンドバーグ所長は「民主主義を傷つける極右や愛国者の政党・政治指導者に投票する可能性が高まっている」と解説。北朝鮮や中国、ロシアは言うに及ばす、ヨーロッパでもあちこちの国で極右政党が伸長しており、世界の先頭に立って民主主義を標榜するアメリカですら、司法の独立性や法の下での平等、裁判官人事の公平さが揺らいだり、誹謗中傷やフェイク映像によるマイナスイメージの刷り込みなどが行われている現状を見ると、本当に冷静沈着、真摯で公正な選挙が行われるのか、米国民は一時的な感情の高まりに流されて間違った選択をしないだろうかと大変気になるところである。