私の見た大谷翔平    (普通部OB 田村耕一郎)

日本選手は昨夜試合終了後、夜中に出発しフロリダに到着。スピーデイな世の中になりましたね。もと野球に明け暮れていたものとして言えば、今回、大谷選手の最も優れたプレーは、あのバントでした。大谷シフトがありヒット、長打を警戒している中で、大谷がまさか地味なバントをすると思った人はほとんどいなかったでしょう。
かつて報道の現場にいた友人からのメールを転送します。ぜひご一読ください。

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入団3年目の2015年のオールスター後、当時、私がキャスターを担当していたスポーツニュース番組に生出演してくれた日でした。 大谷選手らと社食に向かい、他の社員さんがいる中で300円の牛丼を食べました。楽しそうに、にこやかな表情を浮かべながら、本当に美味しそうに世界のOHTANIが牛丼をほおばっていました。  時間の使い方を最も大切にしていた大谷選手にとって、お台場からレインボーブリッジを渡っていく食事会場への時間は勿体ないと考えていたのです。20歳前後なのに……感服でした。

“明日やるべきことはすべて決まっている。時間の使い方は考え抜いている。18時にマウンドに上がる時には、そこからすべて逆算して1分1秒を大切に組み立てていく”  これが日本に居る時からの大谷青年でした。少しの時間も無駄にしない。オンエアで出会う大谷翔平は常に時間と向き合っていました

海を渡り、アメリカ大リーグに挑戦してからもエンゼルスのロッカールームでは規則正しく、規律正しく、時間を無駄にしないルーティンを続ける大谷翔平がいました。着替える時間、身体をほぐす時間、ベンチ裏でバットを振る時間、各選手とコミュニケーションを図る時間……無駄な時間は全くありませんでした。その中でもデータを見る時間、映像を確認する作業に時間を費やし、その時間を大切にしている大谷選手がいました。データ、映像を見ながら自分の動き、プレーを想像し、動きのイメージを頭の中で膨らませている姿が見て取れました。リアルに身体を動かす時間以外に、常に頭の中で想像し、頭の中でプレーをしている時間も特段大切にしているのだと気付かされました。今の活躍ぶりを見ていると肘の怪我を乗り越えたこと、トミージョン手術を行ったことさえも忘れそうになります。肘の傷はとても長い。10センチくらいでしょうか、縫い傷の跡が残っているんです。   ロッカールームで「手術跡を少し見せてくれますか?」と聞いたら、にやっと笑いながら「ダメですよ(笑)。絶対に見せません」と答えてくれたのを思い出します。  自分の傷や、苦しみや痛みを絶対に他に見せない。自分の中で閉じ込め、自らと向き合い解決していく。それを力に変えていく大谷翔平もいました。

「僕は二刀流をやっているとは思っていません。打って、投げて、走って。野球をやっているだけです」  キャスター時代、大谷翔平に「二刀流は難しい、困難ですよね?」という質問は愚問でした。野球をやっているだけですから。二刀流という言葉を彼が極力使わない理由はここにある気がします。「二刀流」ではなく「野球」をやっている。野球全てのプレーを堪能している。  だから時間を切り詰める、時間を無駄にしない、動いていない時は頭で想像する、イメージ
する.
辛いなんて言わない、言っている暇はない、すべてプラスに転換させru…だからこそ人の何倍も時間を要するはずの二刀流を成功させている、ピークをこことい
う時に合わせ、パフォーマンスを最大化させることが出来る。久しぶりに日本でプレーしてくれている大谷翔平選手を観て、色んな答え合わせが出来た気がしました。

今でも牛丼を食べると……目の前でにこやかに、楽しそうに食事をしている大谷青年の顔を思い出す。そして、割りばしの箸袋にこんな文字が浮かび上がってくる…「時間は無限ではなく有限」だと。