エーガ愛好会 (199)  遠い太鼓(34 小泉幾多郎)

ラオール・ウオルシュ監督、ゲーリー・クーパー主演の西部劇と来れば、面白いことこの上なしと言いたいところだが、それ程には感動しなかった。先ず舞台がフロリダとなると西部のカラッとしたドライな雰囲気とは正反対のじめじめした湿気と水の多いエキゾチックな変った雰囲気の歴史的戦争映画と言っても良いのかも知れない。

スーパーヒーローのクーパーともなれば、20本を超える西部劇に出演しているが、この映画や「北西騎馬警官隊1940」「征服されざる人々1947」といった西部劇らしからぬ西部劇もある。フロリダ州エバーグレーズ国立公園で美しきロケ撮影が行われ、スペイン統治の17世紀建立の米国本土最古の石造要塞サンマルコス砦も含めフロリダの景観が映し出される。

1840年フロリダ地方はアメリカがセミノールインディアンと7年間苦闘を続けていた。フロリダ地域の防備に当たっていたテイラー将軍(ロバート・バラット)はクインシー・ワイアット大尉(ゲーリー・クーパー)のもとへリチャード・タフト中尉(リチャード・ウエッブ)と偵察兵モンク(アーサー・ハニカット)を送り出す。ワイアットは味方のインディアンのクリーク族の酋長の娘と一緒になり子供をもうけるものの、白人に妻を殺されるという過去を持つ。40人の部下と共に、任務のセミノールを襲い、砦を破壊することに成功し、捕虜になっていたジュディ(マリ・アルドン)等男女を救った。その後はその一隊のセミノールからの逃避行が、沼地の中を鰐や蛇等が暴れ回る中続く。最後は、セミノールの酋長とワイアットの水中でのナイフでの決闘で決着。セミノール族は退散、ワイアットとジュディは結ばれ、エキゾチックな西部劇は終演。

フロリダ地方の湿地地帯の美しきロケ撮影や水中カメラ使用による決闘場面の迫力ある撮影は良かったものの何となくてんこ盛りで全体的に時代の緩さを感じるのだった。また特記すべきは、兵士が鰐に襲われ水中に引きずり込まれるシーンでの叫び声が音響素材として使われた最初のものと言われている。その後、音響デザイナーのベン・バートが「フェザー河の襲撃1953」で使われた矢で射られたウイリアム二等兵の声にちなみ、その声を「ウイルヘルムの叫び」と名付け、その後の映画やTVに音響素材として利用されたとのこと。

(保屋野)小泉さんの完璧なコメントに付け加えるところはないのですが、一言
感想を記します。
舞台がフロリダで、小泉さんの云われるように西部劇らしからぬ西部劇モドキ映画でした。(インディアンは出てきましたが)ストーリーもただインディアンから逃げるだけの単調な「逃避行」、G・クーパーが主演にしては期待外れのエーガでした。
大昔観て面白かった記憶があったので期待して観たのですが、どうも別のエーガだったようです。

(グーグルから転載)この映画は、ある“音”で映画ファンに愛され、親しまれています。それは兵士がワニに襲われて叫ぶ声。効果を高めるためにアフレコで製作された音なのですが、この作品以降、ほかの映画でも同じ声が使われているんです。「スター・ウォーズ」(1977)で、ダース・ベイダーの深い呼吸やライトセーバーなど、さまざまな音を製作した音響デザイナーのベン・バートは、西部劇「フェザー河の襲撃」(1953)でも使われたこの声を“ウィルヘルムの叫び”と名付け、「スター・ウォーズ」や「インディ・ジョーンズ」のシリーズに使用。さらに、ほかの音響デザイナーにも広まり、「バットマン リターンズ」(1992)や「キル・ビル」(2003)など、400本以上の映画やアニメ、そしてテレビゲームでも、主に男性のキャラクターが吹き飛ばされたり、倒されたりする場面であえて、この叫び声をリスペクトをこめて使っているということです。映画史上の名作。“音”にもご注目ください。