エーガ愛好会 (149) リオ・ロボ    (34 小泉幾多郎)

昔懐かしの西部劇の味わい、勧善懲悪で安心して楽しめた。ハワード・ホークス監督ジョン・ウエイン主演で、グループを構成して戦う三部作「リオ・ブラボー1959」「エル・ドラド1966」「リオ・ロボ1970」の最終作で、ホークス生涯最後の作品ともなった。三作とも苦悩するヒーローの悲愴な心理的描写はなく、肉体的なアクションが純粋に捉えられている。

冒頭から素晴らしい出足。 イントロのギターの大写しによる演奏から始まる。音楽は、ジェリー・ゴールドスミス。出だしの少し暗くて物悲しい雰囲気の曲が全編を覆う。珍しく北軍の制服を纏ったコード・マクナリー大佐に扮したジョン・ウエインが現われ、南北戦争のエピソードをプロローグとする。北軍が列車で運ぶ金塊を南軍が奪うのだが、その南軍で強い役割を演ずるのが、ホルヘ・リベロ(ピエール・コルドナ)とクリストファー・ミッチャム(タスカロラ)。金塊の奪い方が、線路にグリースを塗ったり、列車を止めるために樹木に網を張ったり、車内にスズメバチの巣を投げ込んだりの工夫が為され、大いなる見せ場が作られる。直後終戦になり、ウエインは北軍の中に情報をリークした者がいて、金塊はもとより、親しかった直接の部下を死に至らしめたことから、敵討ちを心に決めていた。終戦は北と南という政治的な対立を超えて個人対個人の友情に結ばれ、南軍だったリベロとミッチャム、そのミッチャムの祖父フィリップたるジャック・イーラムを味方につける。偶然にもリオ・ロボの町の黒幕の中に裏切り者がいることが判り、その町を牛耳るボスや保安官たちと対立することになる。今回は三人の美女が出演、どうにも見分けがつかないが、結局はリベロを愛するようになるジェニファー・オニール(シャスタ・デラニー)、ミッチャムの恋人スサンナ・ドサマンテス(マリア・カルメン)、保安官に恋人を殺され、自身も顔を傷つけられ、その復讐に保安官を銃で撃ってしまうジュリー・ランシング(アメリータ)。物語の最後は、ボスのヴィクター・フレンチ(ケッチャム)を人質にとることに成功し、悪徳一味は滅び。めでたしめでたしで終演。

ジョン・ウエイン出演当時63歳。老いたるヒーローについて一言。リオ・ロボに向かう途中、ウエインと若者リベロと若い娘ジェニファーと野宿。ウエインは若い二人にに気を利かせて、先に寝てしまうが、朝起きるとジェニファーが自分の毛布の中にいるのを発見するとジェニファー曰く「あなたならお歳だから安心よ」に、ウエイン大いにくさる。最後の最後、ジュリー・ランシングとウエインが一緒になったとき、ジュリーが「あなたって…」ウエイン咄嗟に「安心するはやめてくれ!」女性の相手は異なるがオチになっていて、シリアスな問題をユーモラスに語っている。

(編集子)小泉さんのお気に入りらしいホークスの作品はウイキによれば下記の通りである。

ウエイン後半期の三部作は確かに代表作、たとえば 赤い河 や 捜索者 やもちろん 駅馬車 なんかに比べると、小泉さんご指摘のようにウエイン本人が楽しんでいる雰囲気があって、全体のトーンが同じような気がする。主題歌がいいのも共通。ホークス作品ではないが、小生としては エルダー兄弟 も同じような感じがして好もしく思っている。このトーンは ラストシューティスト では一転してしまう。ウエイン西部劇、というなかでこの作品があまり衆目を集めないのは誰もがウエインの遺作であることを意識してしまうからだろう。そういう意味ではこのホークス三部作は完全な娯楽映画として楽しむものなのだと小泉説に同調。