エーガ愛好会 (132)  RAILWAYS   (普通部OB 船津於菟彦)

ドラマティックな展開などとは無縁な小津安二郎監督作品は蒲鉾をアテに燗酒を嗜むような風情があって結構好きなのですが、ダイナミックな映画作りをする黒澤明監督よりもスタティックな小津安二郎監督の方が欧州では(特に玄人筋)評価が高いようです。そうなんです。
この映画は正にそれです。あらすじより淡淡とした「電車」と島根の「稲穂が揺れる風景」と人の心を描いているだけ。あらすじはやや筋の通らない場面が多々あるがどうでも良いのかも知れない。
中井貴一が50歳を目前にして、子供の頃からの夢だった電車の運転士を目指し、家族との絆を取り戻していく男に扮した感動ドラマ。島根東部を走る電車とその田園風景が心を和ませる。子供の頃って電車の運転手に成るのが夢の人が多良いですよね。今テレビ番組でも「吞み鐵」「撮り鐵」モノが「猫番組」と同様に人気がありますよね。
本作は鉄道好きである阿部秀司による製作総指揮の元、細部まで鉄道の描写にこだわって製作された。3年近くを掛けて、部外者が立ち入れない運転台などで撮影する許可を監督官庁から取り付け、一畑電車・一畑電気鉄道(一畑グループの持株会社)・京王電鉄(一畑電車の運転士養成の委託先)の全面的な協力や、島根県、松江市、出雲市など沿線の自治体・団体の支援を得てロケが実施されている。
中井貴一と並ぶもうひとつの「主役」であるデハニ52・53は、お座敷列車に改装された状態で2009年3月29日をもって営業運転を終了していたが、本作の撮影に当たってロングシートへの改装が行われている(お座敷の構造物の撤去までを一畑電車が手がけ、ロングシートの再設置は映画の美術スタッフによる。吊り手は沿線の保育園に保存されているデハ3・6のものを借用)その上で2009年8月に撮影のための本線走行が実施されているのだが、中井ら俳優たちは甲種電気車運転免許(電車運転士の免許)を取得していないため実際に運転するわけにはいかない。そこで美術スタッフが作ったマスコンハンドルやブレーキハンドルを俳優が握った上で巧妙にカットをつなぎ合わせて運転シーンを作っている。しかし、同じ鉄道モノでは「鉄道員(ぽっぽや)」が高倉健の演技と共に優れている。この映画は鉄道モノと言うより「風景・人情モノ」ではないかと思いますが、まぁ一畑電車には凝っていますし、これが主役とも言えそうな映画です。何が良いのかというと人生、仕事一途で良いのか。やりたいことをやり遂げるのが人生だと大声では言わないがそんな人生もアルよ。といった感じの映画が心地よい。
プロ野球選手に成るべく若手が一緒に電車の運転手として新入社員として入社するが、彼は肩を壊して泣く泣くこの仕事に就いている。しかし、その彼も電車の運転手というモノが多くの人命とか人のためになるのは一刻一時も許せないと言う電車の運転手に憧れてくる。癌で一人残り闘病していた母も亡くなり、島根の実家に一人残り、やりたかった電車の運転手に人生を投げ込む。
この「49歳で電車の運転士になった男」も妻は離婚状態で東京で一人ハーブの販売をして居る。最後に夫の運転する電車に乗り「これで良いのだぁ」で終わるのは何となく納得いかないが!人生もそんなモノなのかも知れませんね。兎に角、観て居て電車と風景が心を和ませてくれます。こんな映画も偶には良いかも。