エーガ愛好会 (119) おとうと   (普通部OB 船津於菟彦)

あらすじは結婚してすぐに夫を亡くし、小さな薬局を営みながら、女手ひとつで娘の小春を育てた姉・吟子と、役者としての成功を夢み、無為に歳を重ねてしまった風来坊の弟・鉄郎の物語である。鉄郎は姉・吟子の夫の十三回忌の席で酔っ払って大暴れし、親類中の鼻つまみ者となっていた。以後吟子との連絡も途絶えていたが、娘のように可愛がっていた姪の小春が結婚することをたまたま知り、披露宴に駆けつけた。
歓迎されざる客を追い返そうとする親類を吟子は取りなし、鉄郎に酒は一滴も飲まないと約束させて披露宴に参加させた。しかし鉄郎は目の前に置かれた酒の誘惑に抵抗できず、あっさりと約束を破ったばかりか酔っぱらって大騒ぎを演じ、披露宴を台無しにしてしまう。その事件は、のちに小春の結婚が破綻する一因ともなる。結婚式での乱行に激怒した親類らが次々と絶縁を決め込む中、ただ一人、吟子だけは鉄郎の味方だったが、その吟子も、鐵郎の付き合っている女に150万円借金していてその女が吟子の所へ返済を言いに来て、有り金を総て銀行から下ろして、その女に渡している。この事件をきっかけについに鉄郎に絶縁を言い渡してしまう。鉄郎は悪態を吐いて出て行くが、 このときすでに鉄郎は死の病に取り付かれていた。居なくなった鉄郎の捜索願を出してたんです。で、予想は的中!! 鉄郎は大阪で倒れ、民間のホスピス「みどりのいえ」に引き取られたという鉄郎は、末期がんに侵されていた。面会を拒絶する鉄郎だが、吟子が想像するよりも元気な姿で過ごしている。口達者な鉄郎はみどりのいえでも、よく話を聞かせているという。支払いを心配する吟子だが、生活補助や国からの補助金で賄われていると所長から説明を受けるのだった。、。ここのホスピスの人人が笑いと人としての優しさに満ちあふれている。一つの季節を跨ぎ、みどりのいえから鉄郎の容態が悪化したという連絡が吟子の元に届く。互いの手首にピンクのリボンを巻き付け、存在を確認できるようにした吟子。鉄郎の容態が山場を迎えた頃、小春と亨も駆け付けたが、鉄郎は吟子たちとみどりのいえの人たちに見守られ息を引き取った
しばらくして落ち着いたころ、小春は亨との結婚式を控えていた。痴呆が始まった義母が「あの人だけのけ者だと可哀そう」だと鉄郎の心配をし始めた。これまで白い目で見られてきた鉄郎への優しさに吟子は涙をこらえ、小春は「今からでも呼ぶわ」と声高らかに返答をするのだった。
キャストの• 高野吟子:吉永小百合• 丹野鉄郎:笑福亭鶴瓶• 高野小春:蒼井優が何とも言えない好演。そして何時ものタンタンとした普通の生活を描く• 監督:山田洋次。
邦画らしいというと偏見はあるかもしれないが、とても穏やかに人の温かみを伝える物語である。東京が舞台ながら、人情劇が会話と目線で伝わるのは山田洋次監督の手腕によるものか、吉永小百合などの演者の実力か。淡々とした展開ながら、家庭における普遍的な問題がたくさん提起されている。ベルリン国際映画祭のクロージング作品に選ばれていることからも、世界共通の「家族像」が伝わる一作であることは間違いないだろう。
正に「家族」とは。とか人の「死」とは。「人情」とは。とか語りかけてくることを大声で言うのでは無く、山田洋次監督の独特との描き方で何気なく描いている。そし吉永小百合と笑福亭鶴瓶の好演が光。それをに何とも愛らしい蒼井優がカバーしている。
いい年をした大人の男が、大きな声で「お姉ちゃん!お姉ちゃん!!」と姉を呼ぶ。その屈託のない笑顔は、最期の時を待つまで変わらなかった。いい加減な弟を、腹立たしく思いながらも憎めず、常に心配している姉も、変わらなかった。家族のあり方なんて、仰々しいものではない。家族の本来の姿なんだろう。小生も4人兄弟でしたが既に三人は鬼籍に入り一人残されている!何となく寂しい。やはり「お姉ちゃん!お姉ちゃん!!」と言ってみたかった。