エーが愛好会 (89)  裏窓―カメラの話から始めましょう (普通部OB 船津於菟彦)


「裏窓」観ました。出てくるカメラについてのトリビアをひとくさり。

このカメラ当時としては最先端のエキザクタ 一眼レフの元祖と言われる、エキザクタシリーズのVXです。エキザクタは旧東ドイツのドレスデンですが、オランダ資本のイハゲー社は例外的に高い品質を維持したそうです。使いにくいカメラです。何故かシャッターは左側にあったり使い勝手の悪いカメラですが、当時としては最先端。その後日本のカメラメーカーがライカのM3には勝てないと判断して、一斉に一眼レフカメラを開発して今や世界一となったというわけです。
この映画でジェフがつけたレンズはHeinz Kilfitt Fern-Kilar 400mm F5.6という超望遠レンズです。400mmにとって、F5.6のは今で見ても相当明るいです。その大きさからも納得できます。当時は相当高価だったと思います。

 

グレスー・ケリー綺麗ですね。あの衣装が凄い。衣装はイーディス・ヘッド、当時の洒落た映画は殆どが彼女のデザインでした。素晴らしいの一言に尽きます。

 

(HPOB 菅井)イーディス・ヘッドはヘップバーンが主演した「ローマの休日」「麗しのサブリナ」でアカデミー衣裳デザイン賞を受賞しました(35回ノミネートされて8回受賞)。彼女は主演女優を華美な衣装で飾り立てるというよりはそれぞれの個性を引き立てるシンプルなデザインを志向したようで女優には非常に人気のあるデザイナーだったそうです。
ドイツとオーストリアがルーツのドイツ系ユダヤ人として19世紀末にカリフォルニアに生まれ、UCバークレーとスタンフォードの大学院を卒業したという当時としては異例ともいえる高学歴なインテリ女性でした。

(44 安田)今回久し振りにみて一番印象に残ったシーンは、グレース・ケリーが不審な男の部屋に、彼の留守中、無謀にも忍び込むがその男が戻って来て鉢合わせる。彼が戻る前に行方不明の妻の結婚指輪を見つける。ますます男が怪しいと睨む。ケリーを心配してステュアートは機転を利かせ警察を呼ぶ。警察が到着してケリーは間一髪助かるが、その際、見つけた妻の指環を妻殺害の疑いのあるその男から隠すため自らの指にはめ、その手を背中の後ろに持ってきて、中庭を挟んだ対面のアパートの裏窓から、その男の部屋をのぞき込みながら心配げに待機しているステュアートに知らせる場面だ。その時、ケリーの隣にいた、その男は彼女が庭を挟んで反対の部屋に合図を送って知らせていることに気づいたシーンだ。ケリーの仕草から、彼の疑い深げに鋭い目線を追う一連のシーンが緊迫感を盛り上げ、この映画の白眉だと思う。

舞台はほぼ全編にわたって部屋の室内。場所はニューヨークのグリニッジ・ビレッジとある。マンハッタン島の南西部、lower Manhattan と呼ばれる地域にある集合アパート。舞台がほぼ室内の設定は、後年1967年、ヴィクター・ヤング監督、オードリー・ヘプバーン主演の映画「暗くなるまで待って」(Wait Until Dark)が酷似している。ヒッチコック作品では「ロープ」がそうであった。「裏窓」撮影は全てステュアートの部屋から撮ったという。登場人物は全員アパートの住人で、彼らの生活が一連の流れになったおり、それを可能にするため、「全編スタジオセット撮影」という方法で行われ、窓の外の隣近所のアパート部屋との距離、見える角度、アパート隣人たちの多種多様さ、車道を通過する自動車の種類、台数、タイミングなど、全てが完璧に計算されていたという。ヒッチコック作品の中でも特に作り込みの細かい作品と評価が高い。

(普通部OB 菅原)「裏窓」は日本公開時(1955年1月)に見たから、小生、高校生の時代だ。

ここで、一番、印象に残っているのは、何と言っても、犯人役を演じたR.バーだ。先ず、裏窓越しのトイメンの室内は、当然、音もなく不気味。加えて、そのバーのやっていることは、妻殺しであり、世にも恐ろしい犯罪だ。世の中には、こんな奴がいるのかとかなり衝撃を受けた。安田さんのバーの写真、その恐ろしさとバレたやばさを見事に写し取っている。ただし、「陽の当たる場所」に地方検事で出ていたらしいが、全く記憶にない。

テレビでは「弁護士ペリー・メイソン」(安田さんは、「弁護士ペイトン・プレイス」と誤って表記しているが、人間「グーグル」であっても間違えることはある。別の意味で、「ペイトン・プレイス」の方が面白かったが)、車椅子の「鬼刑事アイアンサイド」など良く見たものだが、バーの代表作は、この「裏窓」だろう(しかし、バーはゲイだったと言うから、いささか吃驚仰天だ)。

原作は、米国の探偵小説作家、コーネル・ウールリッチの短編「It had to be murder」だが、映画の題名「Rear Window」の方が遥かに事を言い当てている。ウールリッチ(または、ウィリアム・アイリッシュ)には、「黒衣の花嫁」(1940年)、「幻の女」(1942年)など、小生が夢中になって読んだ長編が多々あるが、今は、もう忘れられた存在のようだ。

ヒッチコックは短編小説を膨らませて、一本の映画に仕立て上げる点では他の追随を許さない(例えば、「めまい」)。これもそのとうりで、辻褄が合わないなどイチャモンをつけている人がいるようだが(例えば、殺人の証拠がないなど)、それは野暮ってもんだろう。

(編集子)スガチューのメモにあわせてペイトンプレースのうまい写真を探したが見つからなかったので, 出演者の中からボクの大好き女優を思い出してもらうことにした。ドロシー・マローン、なんとも魅力的なスターでしたな。

 ”幻の女” は、最後のどんでん返しの見事さにうならされた名作、その点ではクリスティの ”アクロイド殺し” に匹敵する名作だと思っている。

コロナごもりですることのない人、こういう時こそ、ぼくらのおすすめするミステリを試したまえ。2冊とも気の利いた本やなら、文庫本の棚には必ずあるはずでっせ。