
そのコンクラーヴェを前に、有力な候補である4枢機卿が誘拐される。ラングラー教授が事件解決の為アメリカから呼ばれた。キリスト教とその歴史に疎い者にとっては話の筋を掴むに難儀するが、誘拐の陰には、その昔、近代科学の父と呼ばれたガリレオ・ガリレイ(1564 – 1642年)を中心にした科学者たちによる秘密組織「イルミナティ」が存在していた。科学を信仰するイルミナティは、宗教を第一義とするヴァチカンからの弾圧によって消滅を余儀なくされた組織だった。しかし、彼らの残党は、科学の先端技術によって欧州原子核研究機構が生成することに成功し驚異的な破壊力を持つ「反物質」を盗み出し、ヴァチカン全体の破壊をも計画していた。
ラングラー教授は、ヴァチカンを護衛するスイス衛兵隊長や前(故)教皇の秘書長(役職名をカメルレンゴと言い、ユアン・マクレガー演じる。教皇空位の場合は教皇代理を務める)と共に、事件の解明に乗り出す。誘拐された枢機卿は、この世界の物質は、「土」「空気」「火」「水」の4つの元素から構成されるという概念のキーワードのまま、それらの焼き印を胸に押され一人ずつその元素に関連する方法と場所で、予告殺害されていく。薄気味悪い殺害シーンではあった。4人目はナヴォ―ナ広場の噴水に重りを着けられた枢機卿が投げ込まれるが、間一髪のところで救い出される。物語の展開は、恐るべき破壊力を持った「反物質」の使用を目論む得体の知れない犯人の正体、不気味な殺害とヴァチカン内部の解りにくい人間関係が絡み合い、予告殺害場所もローマの歴史的名所旧跡(ナヴォ―ナ広場、サンタンジェロ城など)を舞台とするなど見応えがあり、映画を通して緊迫感に包まれていて、予想外の結末には驚かされた。

「反物質」を奪い返してヘリコプターで空高く舞い上がり空中でそれを爆発させヴァチカンを救った英雄的な行動を執り、パラシュートで無事帰還したカメルレンゴ(ユアン・マクレガー)を次期教皇に推す声が他の枢機卿から一斉に挙がった。しかし、実はカメルレンゴはイルミナティの黒幕で全てを謀っており、前教皇を異端者として殺害したのはカメルレンゴであったのだ。カメルレンゴと実は相棒であったスイス傭兵隊長の二人の悪魔の秘密の会話を録音されたテープレコーダーで聞いて、ラングドン教授はそのことを悟ったのだ。事態が首尾良く運ばないことに観念したカメルレンゴ(マクレガー)はヴァチカン聖堂の地下で焼身自殺をして果てる。新教皇にはナヴォナ広場の噴水で危機一髪溺死を免れた4人目の枢機卿が選出された。
舞台となった場所がヴァチカン内部など、見応えのある歴史的旧跡を巡って映像が展開されたのは観ていて大変興味を惹かれた。結構神経を凝らして観ないと話に付いていけないキリスト教関連の映画であるが、その価値は充分にあると思った。
(小田)私も放映された’09年にこの作品の本を読み、