エーガ愛好会 (332) 大いなる決闘  (34 小泉幾多郎)

一時は、ジョン・フォード後継者とまで言われ、西部劇の秀作を手懸けたアンドリュー・V・マクラグレン監督の最後の西部劇作品。

映画は1909年アリゾナ地区刑務所の強制労働に従事していたうちの7名が脱走に成功するところから始まる。その主犯が、ジェームズ・コバーン扮するザック・プロボで、ナバホ・インディアンと白人の混血、列車強盗の常習犯で、今は引退しているが、保安官時代のチャールトン・ヘストン扮するサム・バーゲードに逮捕され、その際に妻を殺されたことから復讐の鬼となり、脱走の機会を待っていたが、遂にその機会が、やって来たのだった。このザック・ブロボ率いる6名うちリーロイ・タッカーだけ殺され、ギャント、ウイード、シラーズ、マイク、メンデスの5名が、最後までザック・ブロボと共に、ヘストン扮するサム・バーゲードと戦うことになる。当然プロボ以外の脱走者たちは、プロボのパーゲードに対する復讐心のかけらもないが、賞金が埋めてあり、一人当たり4000ドル入手に釣られ協力する。

今は引退して、娘スーザン(バーバラ・ハーシー)と住んでいるバーゲードは後任のノエル・メイ保安官(マイケル・パークス)から、プロボ一行が列車で、やって来ることを知り、当然プロボは自分を狙うと確信し、メイと共に輸送車に乗り、金貨の輸送情報を流し、罠を仕掛けるが、ブロボはバーゲードの作戦を看破し、彼の自宅へ乗り込み、スーザンを誘拐する。事情を知ったバーゲードは、メイ保安官一行と農業従事者で頼りにならないが、スーザンの恋人で、恋人を助けたい一心のハル(クリストファー・ミッチャム)と追うことになる。ブロボたちは、先住民居留地に向かい、先住民の協力も得て、バーゲードたちを迎え撃つ。先住民居留地での捜査権を持たないメイ保安官たちは、引き上げてしまい、バーゲードとハルだけとブロボ一行との山上での戦いとなる。戦いは壮絶な撃ち合いになるが、2対6と人数的に劣勢のバーゲード側は、芝に火をつけたりして、相手を倒して行く。ブロボは、バーゲードをおびき寄せるためギャントとリーに、スーザンをレイプさせる。このレイプシーンが、西部劇にあるまじき醜悪なもので、おまけにブロボの策略に屈しないためには止めに入れない状況にあるということからなすがまま。最終的には、バーゲードとブロボとの戦い、助け出したスーザンに気をとられたバーゲードはブロボに全身を撃たれるも、とどめを刺そうと近ずくブロボは、バーゲードの近距離からの左手の拳銃に撃たれ谷底に転落してしまう。満身創痍となったバーゲードにスーザンとハルが駆け寄って手当てをする。

引退した保安官と復讐に燃える男という怨念に燃える宿命の対決は、白熱の銃撃戦の果てにクライマックスの決闘へと正統西部劇の様相を呈するが、レイプシーンも含め血生臭く、叙情味に欠け、寂寞感だけが残る。舞台が20世紀初頭の馬の役割が終えようとしていた時代で、製作時の1970年代のアメリカン・ニューシネマの影響もあったかも知れない。

(編集子)小生にとって、マクラグレンとはどこまでいってもフォード騎兵隊ものの常連だった父親のほうであり、ヘストンは 大いなる西部 の頑固者であり、コバーンは出世作、荒野の七人 の口数少ない凄腕のナイフ使いの役とその最後のナイフが突き刺さるカットが忘れられない。その後いろいろな作品を見たが、これに勝る記憶はない。そのせいか、この作品にはあまり熱がはいらなかった。ドクコイズミ、申し訳ない。