エーガ愛好会 (324) 荒野に生きる   (34 小泉幾多郎)

荒野に生きる [Blu-ray]「荒野に生きる1971」は、舞台・時代は19世紀開拓初期の米北部、山系に手負いで置き去りにされた通商遠征隊の猟師が、厳しい大自然を生き抜いたサバイバルであり、置き去りにした隊長への復讐の物語。

この隊長ヘンリーを映画監督でもあるジョン・ヒューストンが扮し、山高帽とダブル前のコ―トでの威圧感で怪演する。遠征隊の猟師である男ザック・バス、狩の途中、熊グリズリーの襲撃を受け、満身創痍の大怪我を負う男に、リチャード・ハリスが扮する。このザックは青年時代から隊長ヘンリーと行動を共にし、隊長はザックを息子同様に育てながらも、いざザックが死ぬと判断すると置き去りにしてしまうという二面性を持つ。遠征隊自体がビーバーの毛皮を求め、白人未踏の米北部を回り、雪深くなる前にミズーリ河に到着しようと苦難の旅を続けていることもある。このビーバーの毛皮を積む船に、山をも越えられるように、車輪をも付けてある。船のマストは、荷車に載せた木造船帆は道を走るときはたたんであり、十字架のように見え、全編を覆う宗教的イメージが強調される。

熊に襲われたザックは意識を失う瀕死の重傷、隊長ヘンリーにより穴を掘られ、聖書を握らせたまま置き去りにされるが、何とか一命をとりとめる。満身創痍の中で、狼連中と競争しながら、バッファローの肉を奪い、落ちていた骨を砕いてほじくり、泥に塗れたザリガニを鷲掴みに食らいつく。布団は木屑や土、聖書を破いて焚火にして耐える。こうした中で、自分を捨てた隊長への復讐心を胸に秘めながらも、原住民アリカラ族の女性の出産を目のあたりにしたりして、残してきた息子を思い、遠退く意識の中過去を夢で見る。過去のことは、画面に出てきての回想のみだが、どうやら結婚した妻は死に、息子とは、別れ離れになってしまったらしい。通商遠征隊は、時折原住民のアリカラ族に遭遇したりして、壊滅状態に近ずいているところで、このヘンリー率いる遠征隊、原住民アリカラ族、重傷から回復したザックが対面する。ザックは疲弊した遠征隊を見て復讐心が消え、ザックの胸のうちを読み取ったアリカラ族の酋長(ヘンリー・ウイルコクソン)も静かに立去り、ザックはヘンリーから自分の鉄砲を受け取り、一日も早く息子を探し出さねば、と歩みを速めた。最期がそれまでの苦渋の物語から信じられないような終演には驚き。

監督は、リチャード・サラフィアンで、西部劇の体裁をとっているが、厳しい大自然を生き抜くサバイバルで復讐と父子の物語という宗教的雰囲気が漂う。撮影監督ジェリー・フィッシャーで自然描写を望遠やロングショットで美しくとらえていた。音楽は偉大なアレンジャーと言われたジョニ・ハリスで印象的なメロディが多かった。