ウオールストリートジヤ―ナル社説です  (HPOB 菅井康二)

典型的な保守派、及び共和党寄りの立場をとっていると言われているウォール・ストリート・ジャーナルの2月13日付の社説です。
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《【社説】トランポノミクスがあおるインフレ再燃 大統領は金融緩和を求めるが、さらなる物価上昇を望むのか》

ドナルド・トランプ米大統領はマネーというものを分かっているのだろうか。現金としてのマネーではなく、資金の供給や金利で測られるマネーの価値、そしてそうしたものがインフレに及ぼす影響を理解しているのだろうか。インフレ率が3カ月連続で上昇したことを米労働省が報告したのと同じ12日に、トランプ氏が金利の引き下げを求めたところを見ると、答えはどうやら「ノー」のようだ。トランプ氏は自身のソーシャルメディアへの投稿で、「金利は引き下げられるべきだ。これは今後発動する関税と密接に関連するものだ」と述べた。こうした混乱した思考の積み重ねは、理解しがたい。特に、関税の引き上げは影響を受ける商品の価格上昇を意味するからだ。だが、トランプ氏はおそらく、物価上昇の責任が問われた際に、国民の目を別のところに向けさせたいのだろう。

そうだとしても、もしトランプ氏が短期金利(政策金利)をコントロールする連邦準備制度理事会(FRB)のせいにしようとしているなら、その分析は間違っている。インフレ率の上昇は、FRBが利下げにより慎重にならざるを得ないことを意味する。これが、1月の米消費者物価指数(CPI)が前月比0.5%上昇したというニュースに対する金融市場の受け止め方だ。米長期金利は大幅に上昇し、10年物米国債利回りは4.53%から4.63%に上がった。これはインフレを巡る市場の懸念を反映している。

こうした懸念は、CPIの動向に基づいた正当なものだ。CPI上昇率は昨年10月に前月比0.2%となって以降、毎月上昇している。前年同月比での上昇率は、直近の最低だった9月の2.4%から、現在は3%まで戻っている。食品とエネルギーを除いたいわゆるコアCPIは、前月比で0.4%、前年同月比では3.3%それぞれ上昇している。

物価は広範囲で上昇し、保険、中古の乗用車とトラック、航空運賃、医療、散髪、保育、スポーツイベント、ケーブルテレビなど、さまざまな分野が影響を受けた。

大統領就任から3週間しかたっていないため、これはトランプ氏の責任ではない。しかし、FRBが昨年9月に時期尚早であったにもかかわらず金利を0.5ポイント引き下げたことが間違いだったと、誰かが彼に伝えるべきだろう。長期国債の利回りはその直後に急上昇して、高止まりした。だが、FRBはそれでも11月に0.25ポイントの追加利下げを実施した。

ジェローム・パウエルFRB議長は、この間違いを認識しているようだ。彼は何週間にもわたって、今後は追加利下げを急がないと言い続けているからだ。大統領がバイデン政権時代のようなインフレ高進を復活させたいのでなければ、トランプ氏がいま最もすべきでないことは、迅速な追加利下げをパウエル氏に求めることだ。

パウエル氏をトップとするFRBは、トランプ氏の言動を無視する可能性が高く、そうするべきだ。しかし、トランプ大統領の利下げ要求は、「トランポノミクス(トランプ氏の経済政策)」のもう一つのリスクを示している。トランプ氏は不動産投資家として、金融緩和を支持する立場を長年貫いてきた。彼は低い金利とドル安を好んでおり、他の条件が変化しなければ、それは物価上昇につながる。

政治的観点から見ると、インフレの再燃はトランプ大統領にとって任期中最大の脅威になりかねない。トランプ氏は、ジョー・バイデン大統領の政権下でのインフレと実質所得の減少に対する有権者の反発を背景に、大統領選で勝利した。インフレ率が再び上昇に転じたことを受けて、実質所得の平均値は過去3カ月間、横ばいとなっている。こうした傾向が続けば、現在53%のトランプ氏の支持率が長期間維持されることはないだろう。
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この記事では、トランプが経済のメカニズムを全く理解していないと指摘されています。大統領選で彼に投票した、民主党から離れたラストベルトの労働者たちにとって、最も忌み嫌うものの一つが「インフレ」であることは間違いありません。彼らが自らの選択が首を絞める結果になると気づくのに、それほど時間はかからないでしょう。