エーガ愛好会 (299) エルヴィス   (大学クラスメート 飯田武昭)

この映画はエルヴィス・プレスリーの活躍した1950~60年代のアメリカ文化、特に派手な色目のアメ車やネオンサインが輝くメンフィスやラス・ヴェガスの夜の街並みを、やや強調して再現している映像はノスタルジーを感じられて良かったと思う。

プレスリーを演じたホースティン・バトラーという俳優はよく演じていると思うものアクションなど遠目には似ているが、アップになる近目には似て非なる印象があるのは止むを得ないか、プレスリー・ファンとしてはやや複雑。彼のマネジャーのトム・パーカーなる人物を演じるトム・ハンクスが予想外に年齢を重ねた顔つきに少し驚いた次第(「フォレスト・ガンプ」「ユー・ガッタ・メール」の2本しか見たことがないが)。

物語の切迫感や喧噪や臨場感を表現する撮影・編集手法か、画面を2分割、3分割、多分勝してカット動画を流すシーンが時々出てくるが、個人的にはこの種の手法は映画に持ち込んで欲しくない、最近のネット社会の延長の気がした。

プレスリー・ファンとしては、もう少し歌うシーンをじっくり聴かせる場面を多く期待したが、メンフィスで “ハートブレイク・ホテル” “ハウンド・ドック”
“監獄ロック”を立て続けに歌うシーン、ラス・ヴェガスのInternational Hotelの大ホールで “Can’t Help Falling In Love” “Unchanged melody”などを歌うところなどファンの絶叫の中で歌うシーンが再現されていた。

42歳でメンフィスの自宅で心臓発作で亡くなった不世出のエンターティナーの突然の死に対して、先日100歳で亡くなった当時のカーター大統領が、その死を惜しむ声明を出したというメッセージが画面に出て、大いに時代の流れを感じた。もともと伝記映画の作成は本人を演じる俳優の選択から始まり、その生い立ちやその主人公をどう捉えてセリフや画像に表現するか、脚本作りから難しい問題があるだろうと思う。