(本稿でドイツの現状について菅原さん、飯田さんの寄稿があったが、文中のトピックの一つであったイスラム教徒人口の現状について調べてみた)
ドイツには現在、1600万人、全人口の20%近い「移民の背景を持つ人々」、即ち移民とその子孫が存在している。一番多いのがトルコ人を主とするイスラム教徒である。国内経済成長に伴う労働人口不足を補う為の移民流入、富んだ国を目指す周辺国(東欧・バルカン半島・中東・アフリカなど)からの流入だ。第二次世界大戦時のアーリア民族優性思想の反省から、移民に寛容な政治・文化・社会の風潮が生まれた。メルケルはそれをさらに助長する政策を執った。今では、巨大化した移民人口とそれがもたらす深刻な問題にドイツ政府と国民が気が付いているが、もはや「覆水盆に返らず」状態になっているようだ。移民人口の多くはドイツ国籍を取得して(しつつあり)ドイツ人として生活している。郷に入れば郷に従わない彼等独自の生活をして、経済格差の問題も重なり、ドイツは大きな問題に頭を痛めている。
隣国フランスでは、今日、全人口の約9%に当たる600万弱のイスラム教徒が暮らしているとされ、モスレム人口の規模はEU加盟国の中では最大とされる。モスレム人口の8割以上が北アフリカの3国(アルジェリア・モロッコ・チュニジア)のいずれかにルーツを有している。モスレム人口と移民問題がもたらす国内問題はドイツと同様、一旦居住を認めた以上(国籍か永住権付与)、その解決は一筋縄では行かないのは、マスコミ等で報告されている通りだ。
イスラム教徒人口は現在約20億人(世界総人口の約1/4)、2030年には22億人(同26.4%)に達する見込みで中東産油富裕国の影響力と相まって、無視出来ない存在感と政治的・経済的・文化社会的影響力を増して行きそうである。
毀誉褒貶いろいろあろうが、アメリカのトランプ次期大統領が標榜する、国境を閉じ中南米からの不法移民を追い出す(祖国へ帰国させる)施策はむべなるかなとも思う。独仏の難しい移民問題の現状を教訓とすると、圧倒的に大きい出生率でスペイン語を話す中南米移民人口の急激な増加は、アメリカ国内の人種的・経済的・社会的分断を助長させかねず、難しい舵取りとなるのは必死だ。
日本も、道徳的観点や世界の趨勢だからといって多様性を多として、将来「覆水盆に返らず」と大後悔することのないように、移民問題や海外からの労働人口流入問題には独仏米の現状を冷徹に観察して、冷徹な施策を講じて貰いたい。治安面の不安、文化社会面の混乱など、単一民族国家としての伝統と文化を損なうことない慧眼を持って政府は対応することが肝要だ。
モスレム人口の国別分布などを以下に図説しておこう。