紅葉とジャズ  (44 安田耕太郎)

11月初旬、錦秋の紅葉を愛でに岩手県平泉の世界遺産「中尊寺」と「 毛越寺」に友人を案内して行ってきた。もう一つの目的は、隣町の一関市にある日本一音の良いジャズ喫茶「ベイシー」で音楽を聴くため。
快晴に恵まれレンタサイクルで縦横無尽に平泉を駆け巡った。芭蕉の有名な句「夏草や兵どもの夢の跡」に石碑からは眼下に北上川を見下ろし、遥か遠くには義経終焉の地・衣川と岩手山が望めた。標高差200m弱の小山の上にある中尊寺の金色堂辺りは紅葉真っ盛り。毛越寺ではゆったりとした趣きの異なる浄土庭園を楽しんだ。
散策の後はベイシーで夜中過ぎまでど迫力のJBLサウンドを堪能。 使用されている音響機器は勤めていた会社の製品なので、故郷に帰った気分で音楽を楽しんだ。聴くのは全てアナログLPレコード。ジャズ・クラシック併せて1万枚を越える棚に整然と収められた盤から、主人が名人芸で瞬時に抜き出して聴かせてくれる。ベイシー(Basie)はジャズ界の大御所Count Basie本人から命名された由緒ある店名。ライブ演奏も時々催し有名ミュージシャンの生が聴ける。トップの写真は毎年ライヴを行う渡辺貞夫。女優鈴木京香の横顔が前列に見える。
たまたま、「花子とアン」「外科医 ー 大門未知子」「西郷どん」の脚本家 中園ミホが来訪。脱稿して息抜きに音楽を聴きに来たとのこと。明治維新の話にも花が咲く。紅葉に目も心も高揚し、ジャズに耳も魂も昂揚した、いい秋の東北への旅だった。