最近再放送の懐かしいエーガを改めてみた。先日の映画音楽ランキングでも出てきたこの曲のテーマは、僕らの年代の人なら必ず聞いたことがあるはずだ。当時はまだ、米国のヒット曲の日本語版を歌うシンガーも多かったが、雪村いづみはその代表格で、”シェーン” の Call of the far-way hills は 遥かなる山の呼び声 というタイルで歌い、日本に紹介された時にはインストルメント曲だけだったこの映画のテーマも歌ったが、違和感のある歌詞だった。例によってグーグルは下記の通り簡潔に紹介している。
- 誇り高き男のテーマ」(US No. 39 – 1956年7月)ライオネル・ニューマン作曲、ネルソン・リドル録音。
- 日本ではスリー・サンズの演奏による主題曲が日本ビクターから発売され、レコード売上は50万枚を超える大ヒットになった[3]。また、主題曲は文化放送『ユア・ヒット・パレード』で1956年度の年間9位を記録している。
1956年だったか、と改めて驚くが編集子は高校2年生。フィルムをいつ、だれと観たのか記憶はない。トップシーンは牛追いの長い旅を終えてカンサス州のある街の外にたむろする,角の長い肉牛群のあいだを主人公のキャス(ロバート・ライアン)がゆっくりと馬を乗り入れてくるところから始まる。Long-horned Cow というのはテキサスで飼育されていたはずで(このことをうたったCW曲があったのだが曲名を知らない)この一団がテキサスから来たことが知れる。ジョン・ウエイン老成期の名作 赤い河 はやはりテキサスからカンサス州までのロングドライブの物語で、西部開拓時代、旺盛な開拓民たちの食欲を支えた肉牛の移動はハイリスクハイリターンのビジネスだったことがわかる。余談だが、やはりウエインの チザム はこの投機的ビジネスで成功したジョン・チザムを扱った話で、この時チザムが開拓したルートはのちのちまでチザムトレイルという名で呼ばれる、これも西部劇の定番的存在になる。
が、ともかく、この一団が街に入り、カウボーイたちによる一時的な景気を当て込んで、町ではカネ目当ての騒動が始まる。これを苦々しく見ている保安官のキャスは、その遠因が最近開業した店の派手なやり口であり、そのオーナー(ロバート・ミドルトン)が彼の過去とつながりのある男だと知る。その過去がどんなものだったか、はまだわからない。
一方、カウボーイの一人サッド(ジェフリー・ハンター、トップシーンで現れる一人だが、最初から因縁の在りそうな登場をする)が、キャスに、お前に丸腰で殺されたアンダースンの息子だ、と名乗って近づく。キャスはそれは全くの誤解だ、自分は丸腰の人間を撃ったことは一回もない、とこたえる。サッドはこの街に滞在すると決めて職を探すが口がなく、いろいろあったすえにキャスはサッドを保安官助手として採用する。サッドは依然、キャスを仇と考えていて、ふたりで射撃練習をしているときに彼を撃とうとするが失敗して逆に説教されてしまう。この間で、前の街でサッドの父親は銃を隠し持っていてキャスを闇討ちにしようとしたのだが、キャスが見破って射殺し、それが丸腰を撃ったと誤解されて前の街を出たこと、その背後に今度店を開業したバレット(ロバード・ミドルトン)と関係があったこと、がわかってくる。
キャスは保安官として店の暴利を食い止めるための手を打っていくが、それが邪魔になるバレットは殺し屋を雇ってキャスを付け狙う。キャスはその過程で受けた傷が元になって、緊張すると目がかすんでくるという保安官としては最悪の病気になる。バレットとのいさかいの間で、キャスを信用するようになったサッドがいくつかの乱闘の後、悪行を認めようとしないバレットが隠し持っていた銃で自分を撃とうとしたところを撃つ。周りの人間が、サッドが丸腰のバレットを撃ったと誤解する中で、サッドは死んだバレットの手に隠されていた拳銃を抜き出して見せ、納得させる。サッドの父親が実はバレットと同じように卑劣なやり方で自分を撃とうとしたのだ、という事実をサッドが納得したことを見届けて、キャスは恋人(実に懐かしや、ヴァージニア・メイヨなのだ)と町を去っていく。
この映画の題名である The Proud Ones を誇り高き男、と訳したのは納得できるが、かのクーパーの名作(同時にグレイス・ケリーの初西部劇でも有名)真昼の決闘 原題 High Noon の現地での宣伝文句はクーパーの役柄を the man too proud to run, すなわち誇りを守るために逃げなかった男、と書いている。サッドの誤解を解くために、無用な弁解ではなく結果的には自分を危険にさらすことで真実を教えたキャスの、それが彼の 誇り であったからだ(英語の題名が ones と複数になっているのは、ライアンとハンター双方を指しているからだろう)。ロバート・ライアンの略歴を見てみると、俳優として成功するまでに大変な苦労をしていることがわかる。ほかの役どころも考えてみると単なるヒーロー役ではなく、渋い役が多いことがわかる。人生の年輪、とでもいうのか、好きな俳優のひとりである。それと、ジェフリー・ハンター。捜索者 でもいい雰囲気の俳優だったが、惜しいことに42歳という働き盛りで脳梗塞のため亡くなった。どこかでも書いたが、ロバート・フランシス(ケイン号の反乱)とともに、惜しい男だった。