長生きの秘訣-先回の話につづけて  (普通部OB 篠原幸人)

長生きに皆さん共通の安易な秘訣などは無いと思います。一人一人が遺伝的素因も生活環境も体質も趣味も持病も、毎日の生活のリズムや睡眠も全く違うのですから。しかし一つ、参考になるのは、今から200年以上前に書かれた杉田玄白の書だと思います。杉田玄白というと「解体新書」が有名ですね。確かにこれも貴重な著書ですが、内容は人体解剖の絵であって、オランダの本の模写ないしは刑場に行ってスケッチすれば、誰にでも?描けるよという意地悪な見方もできます。一方、彼のもう一つの著書、「養生七不可」はIT時代の現代にもピッタリ当てはまる部分が沢山ある素晴らしい教訓かと思います。学生時代、漢文の授業は寝ていた方々にも理解しやすい様にその7つの「してはいけないこと」を、現代風に解説してみたいと思います。中学時代の漢文の授業を想いだすなぁー。もっとも、最近の中高校には漢文の授業などは無くなっているかもしれません。今度、孫たちに訊いてみます。

  • 昨日非不可恨悔

昨日のことを何度も想いだして、恨んだり悔んだりしないこと。次の第2項と同じで「くよくよすんな」という事ですね。これはストレスの多い現代にも当てはまりますね。

  • 明日是不可慮念

今後のことをあれこれと思い悩まない。「ケセラセラ、成るようになるわ」と口ずさめという心境でしょうか。最近老年期や初老期うつ病の患者さんも多く見かけます。またうつ病だと思ったらパーキンソン病の始まりなんてこともあります。更に厄介なのは、うつ病の薬がパーキンソン病様の症状を出すこともあったりして。だから信用のおけない医者からの薬は安易にのむな、薬をやたらに欲しがるなという事も強調したい。

  • 飲与食不可過度

飲みすぎ、食べ過ぎは良くない。当たり前ですが、昨日ワインを一本あけた貴方!

ワインはグラス1-2杯を静かに嗜むのが本当の「通」ですよ。主食の米・パン・麺類・パスタは控えめに。おかずは植物性タンパク(豆・豆腐など)や魚を十分に、動物性タンパクの特に牛肉・豚肉などは週に2-3回以上はお勧めではないやね。ステーキ300gなんてのは週1程度でやめておいてください。まあ、パートナーに早く死んでほしけりゃ別だけどね。もちろん塩分の取りすぎも不可。インスタントラーメンやそばの汁は飲むな。1日の塩分がその一杯だけでもうオーバー。「腹八分目」とはよく言ったよね。

  • 非正物不可苟食

新鮮でないものや、不自然なものは食べないこと。当たり前だけど。

  • 無事時不可服薬

ここでは不必要に薬は飲むなといっているけれど、逆に、症状が軽いうちに早く薬で治す事も重要だから難しい。昔は薬らしい薬がなかったからね。近代風に言うならPolypharmacy、すなわち多剤服用は避けるべき。特に不必要なビタミン剤とか余計なサプリメントは飲むなと解釈すべきかな。ビタミンや身体にすでにあるものを更に服用しても、肝臓で壊されて腎臓から尿になって出るだけ。肝腎に余計な負担をかけるのはやめようよ。

  • 頼壯実不可過房

ひらたく言えば元気だからと言って、余り精液を無駄に費やすなってことかな。まだ元気な方もほどほどに。これによく似た言葉に、江戸時代の健康おたく、貝原益軒の「接して漏らさず」というのもありましたね。但し、これが本当に健康や長寿と直接関係あるか否かを明らかにした論文はまだ読んだことがない。女性にもあてはまるかも不明。読者に婦人科の先生がいたら教えてください。

  • 勤動作不可好安

出来る範囲内で良いから、マメに身体を動かしなさい。まあ私のように毎週テニスだ、ゴルフだなどと動き回りすぎるのも考え物ですがね。散歩もタランタランと歩くだけではなく、薄っすら汗をかくように手をシッカリ振って歩こうよ。歩幅も十分にね。暇だと、一日中テレビの前から動こうとしないのはダメという事。自分も余り他人の事を言える立場ではないけどね。

今日は殆ど漢文の授業でしたね。もっとも気候条件なども寿命には影響します。Blue zoneと呼ばれるイタリアやギリシャの島々―シンガポールー沖縄―アメリカ・カリフォルニア州ーコスタリカにかけては平均すると長寿者が多いとも言われるが、今更引っ越しても間に合わないだろうね。