今年2024年NHKBS1最初の放映西部劇。マカロニウエスタンの巨匠と称せられ、クリント・イーストウッド主演により「ドル箱3部作」といわれた「荒野の用心棒」「夕陽のガンマン」「続夕陽のガンマン」を全て音楽エンニオ・モリコーネで制作し、マカロニウエスタンの火付け役となった。この「ウエスタン」に至り、単なるイタリアでのマカロニウエスタンから、本家アメリカに対する献花という域にまで成長してきた。どちらかと言うと娯楽性を追求してきた西部劇から一転して、滅び行く西部への感傷と時代に取り残されて行く西部の男たちを詩情豊かに謳い上げるドラマとして制作したのだった。
冒頭から約10分余セリフもなし。3人の男が、ある駅で誰かを待っている。一人スネイキー(ジャック・イーラム)、顔に付いた蠅を振り払おうと表情筋を動かし、最後銃身に蠅を閉じ込める。一人ストーニー(ウディ・ストロード)、天井から落ちてくる水をハットで受け止め飲み干す。もう一人ナックルズ(アル・ムロック)、指のストレッチをしながら列車を睨むと到着。「真昼の決闘」のオマージュだが、目的がはっきりしない。列車が去るとハーモニカを吹く男(チャールス・ブロンソン)が立っている。セリフ「馬が1頭足りない」「2頭足りなくなる」3人倒れる。「真昼の決闘」のこれだけでなく他にも過去の西部劇映画を彷彿とさせるような場面が具体的にはっきりはしないが引用されている。
場面は代り、数年前に妻を亡くし後妻を受け入れる父娘に二人の息子の家族の団欒に、土地とカネを奪い取るべく鉄道王モートン(ガブリエル・フェルゼッティ)の差し金で、フランク(ヘンリー・フォンダ)と計5人の男が、子供までも、名前を聞かれたと殺してしまう。ニューオーリンズで高級娼婦だったジル(クラウディオ・カルディナーレ)が何故殺されたブレッド・マクベイン(フランク・ウルフ)の後妻に呼ばれた理由は不明だが、その死を知らず、列車から馬車に乗り換え、あの駅馬車以来のジョン・フォードのロケ地モニュメントバレーを走るのだった。マクベインが居を構えたスイート・ウオーターへ。広大な土地
と鉄道の利権を収めるようになったジルが、この映画の中心人物となり、鉄道王モートンとフランクが悪役、一時マクベイン一家殺害の汚名を着せられたシャイアン(ジェイソン・ロバーツ)とハーモニカが善玉となり、ジルと夫々が絡み合いながら争うことになる。
モートンが部下を使い、フランクを狙う場面等もあるが、最後はハーモニカとフランクが決闘、ハーモニカが倒す。過去ハーモニカの兄の殺しに、フランクが係わっていた過去がフラッシュバックする。悪役フランクの倒れ方、フォンダの悪役も様になっていた。家を建て、駅を建て、町を作るという死んだ夫が抱いた
壮大な夢を実現すべく、ジルは町の大衆の中へ、入って行く。古き男たちは、命を落とすか西部の荒野へしか帰るしかないのだろうか。新たな時代の幕開けを告げる俯瞰の映像で幕を閉じる。
(安田)小泉さんのご丁寧な追加解説で「ウエスタン」がよく理解できました。イタリア人監督だから紅一点のイタリア女優クラウディア・カルディナーレを出演させたのでしょうが、「刑事」「若者のすべて」「山猫」から成熟した大女優振りを魅せてくれました。映画は2度観ました。
1960年代「ドル箱三部作」で大ヒットしたマカロニウエスタンの名声を引っ提げてハリウッドで演出したセルジオ・レオーネの「ワンス・アポン・ア・タイム三部作」とも呼ばれる一作目が「ウエスタン」(Once Upon a Time in the West)。コンビを組むエンニオ・モリコーネの主題曲が珠玉。2作目の「夕陽のギャングたち」(Duck, You Sucker) 1971年製作と3作目「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」(Ince Upon. time in America) 1984年製作の主題曲、3作目の主題曲「デボラのテーマ」(Deborah’ Theme)は、「ウエスタン」主題曲と共にとても気に入っています。
(編集子)”移りゆ
く西部” というコンセプトでは、”明日に向かって撃て” とか ウエインの遺作 ”ラスト・シューティスト” や、単なるドンパチと誤解されることが多いけれど ”ワイルド・バンチ” なんかが思い浮かぶ。滅びゆくものの美学、という言い古されたテーマなのだが、日本人には特に「アピールするのではないだろうか。
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