エーガ愛好会 (229)  ダンディー少佐  (34 小泉幾多郎)

ジョン・フォード監督以降の西部劇の巨匠の一人サム・ペキンパー監督の「荒野のガンマン1961」「昼下がりの決闘1962」に次ぐ3作目の作品。ペキンパーの作品を見るとアメリカ精神の権化ともいうべき剛直な西部男の誇りの挽歌、哀切なエレジーといったものを感じるが、この作品も同様で、しかも最終的には、プロデューサーと揉めて、最後は編集権迄奪われてしまったといういわく付きの作品。監督はこの後4年間第4作「ワイルドパンチ1969」まで不遇の時代を送ったとのこと。

冒頭から中盤までは、緊密な画面構成とか、砂漠と水場の美しいロングショットの数々に思わず息を飲む。1864年10月31日南北戦争末期のニューメキシコ準州で、第5騎兵隊の一個中隊が、チャリバ(マイケル・ぺイト)率いる47名のアパッチの待ち伏せを受け、虐殺された。一人生き残ったラッパ手ティム・ライア(マイケル・アンダーソンJr)のその後の手記により物語は進行する。ダンディー少佐に扮するは、ベンハーやエルシドとして伝説を演じてきたチャールトン・ヘストンが無骨さとしたたかさを発揮、この騎兵隊長に率いられるメンバーが、グレアム中尉(ジム・ハットン)、ミュエル・ボッツ斥候(ジェームス・コバーン)、ゴメス軍曹(マリオ・アドルフ)、チラム軍曹(ベン・ジョンソン)、ハドリー脱走兵(ウオーレン・オーツ)といった一癖ありげなメンバー。人員不足に同行させた南軍捕虜たち20名。そのリーダーのタイリーン大尉(リチャード・ハリス)がダンディ―と 士官学校の同期で、過去の経緯から何かとことあるごとに対立。服装からしてダンディーは開幕時からどういう訳か上着なしの上半身下着のままで登場したのにはびっくり、タイリーンはいつも正装できちんとした服装で騎士道を貫く。他にも人員不足で採用した黒人兵たちや敗残兵たちが混乱を引き起こす。更に当面の敵チャリバ率いるアパッチが逃げ込んだメキシコの村にはフランス騎槍兵がおり、これとも戦わざるを得なくなった。凶悪なはずのチャリバは意外と簡単にラッパ兵ライアンが殺し、何となくやる気をなくしたダンディーは、村で会ったドイツ人未亡人テレサ(センタ・バーガー)と懇ろになり、二人で水浴しているうちにアパッチの弓矢で足を射ぬかれる。それだけでなく、メキシコの酒場で其処の女に手当てをしてもらいながら、ベッドに連れ込み、その場面をテレサに目撃される醜態を見せる。こうなると隊長としての権威も吹っ飛ぶ。その後は酒浸りの日々。女性関連は付け足しで必然性が感じられない。それに比較するとリチャード・ハリス扮するタイリーン大尉のこれまでの姿の恰好の良さは最後まで続く。何をやってもやらされても恰好いい。最後はリオ・グランデ川を対峙したフランス軍との激戦へ。この時点では、不思議なことに、ダンディー少佐は元の勇ましい少佐に戻っている。このアル中気味のダンディーを救ったのもタイリーンなのだ。フランス軍に奪い取られた星条旗を取り返したタイリーンが、敵弾に撃たれながらも敵の只中へ単身踊り込み壮烈な戦死。ダンディーがその国旗を持ち帰る。ダンディーは部下11名と共に帰還へ。 どうやらこれは、ペキンパー監督の意図した終わり方なかは疑問。軍人らしく死んだのはダンディー少佐?タイリーンがダンディーに代って勝利?という結末でもおかしくないというスッキリしない作品だった。