オリンピックとコロナについて   (普通部OB 篠原幸人)

昨日掲載させていただいた船曳さんに続いて、同期のエース、ドクター篠原からのメールを紹介する。彼は今、二つの誤解があるのではないか、と問いかける。ワクチン接種が終わった、と気を抜けないことをドクターは警告している。

 

皆さん。昨日の全米プロ野球オールスター戦を観ましたか? 「オータニさん」の人気があったのは嬉しいけれど、僕の目は観戦中の観客が誰一人、マスクをしていないことについ目がいっちゃいました。2-3年前の録画かと思うほどで、アメリカ人はもうコロナなどどこ吹く風?ですね。流石はトランプさんがまだ人気のある国ですね。一方で、世界で最もワクチン接種率の高いイスラエルでは、また感染率が上がったので、再度マスク着装が義務付けられたとか。

今日の東京の新型コロナ発症者はついに1,300名を超しました。一方で国会議員がまたマスクなしで派閥会合を開き、関係者が6名ほどPCR陽性になったのに、会合とコロナとは関係ないというコメントをしたという話も聞こえてきます。彼らがそう思うのは勝手ですが、最近の国会議員は困ったら「遺憾に思う」とか、「申し訳なく思う」と言えば、国民は何でも許してくれると思っているのでしょうか。もっとも何も謝らないで辞めちゃった首相もいましたね。

アメリカ人は兎も角、日本人の多くはワクチンを接種しても新型コロナに罹ることもあるとは知っている筈です。しかしコロナウィルスはワクチンを接種した貴方の回りにも沢山存在しています。貴方がワクチン接種をしていても、そんなことをウィルスは知りません。ウイリスはそのまま皆さんの鼻や目、のどの粘膜に張り付きます。但し、ワクチンを接種して身体の中に抗体が沢山あれば、その抗体がワクチンと戦って身体への影響を最小限に押さえてくれます。しかし一部のウィルスは貴方の体のどこかにまだ潜んで生きているかもしれません。大きな声でしゃべったり、他人に接触すれば、ウィルスはまた息を吹き返して他の人に移っていきます。自分がワクチン接種しているから他人にも移さないと考えるのは大きな誤りです。あなた自身が伝染媒介者になっている可能性も十分あるのです。

もう一つの誤解は、英国(α)株・インド(Δ)株・最近はλ株などの変異株についてです。ニュースなどで、インドに行ってもいないのにインド株にかかったのは不思議だというニュアンスの報告を見かけます。しかし、このエッセイの愛読者は、徒然なるままにーー16に詳しく書いたので覚えておられるでしょうが、これらの変異株が全て外国から入ってきたとは限らないことは御存じですね。国名はその変異が初めて発見された国の名前です。日本国内でもウィルスは必死に生き残りをかけて、頑張って強くなろう、強く変わろうと努力しているのです(少し見習ってください)。アルファ株、デルタ株、そしてラムダ株などの一部は日本国内だけでも変異している可能性が高いのです。日本株という名前がないのはそれだけ日本の検査が遅れているからです。今後、「新しい日本株が見つかった」などの不名誉な報告がなされないようにするには兎に角、感染を鎮静化する必要があります。感染者をさらに増やすような行為や政策は絶対に避けるべきなのです。

もうオリンピックは止められません。オリンピック開催自体に私は反対ではありませんが、なんとか胡麻化してでもここで開催し、それを自分の成果や金づるにしようと考える人には不快の念を禁じ得ないのです。 全く根拠がないのに「リスクはゼロである」と発言するバッハ氏、世界中から来る何万人かの関係者の全員が感染予防のプレイブックを厳守してくれると信じている組織委員の人たちに皆さんは疑念をお持ちではないでしょうか。

前回私は無観客を強く勧めましたが、その希望はやっと叶えられました。多分、次の話題はどこまで感染が蔓延したら途中でもオリパラを中止するのかに移ると思います。感染者が何人増えてもオリンピックだけは終了し、パラリンピックは中止するのか、パラリンピックを差別したと言われたくないから国民の犠牲には目をつぶって最後まで関係者は主旨を貫徹するのか、いずれにしても既に賽は投げられたのですよね。