エーガ愛好会(57)   ”地獄への道” カラー版! (34 小泉幾多郎)

日本公開された当時は、どういう訳か?米本国ではカラーなのに、日本へはモノクロという時代があったのだ。このエーガのほか、「モホークの太鼓1939」「西部魂1941」「スイングの少女1948」。終戦まもなくで、まだろくに食べ物もない時代ではあったが、馬鹿にされた気がしたし、折角のカラーがモノクロで上映されてどれだけ経済的に得になったのか、未だにわからない。その後日曜映画劇場でカラーで放映されたらしいが、小生は今回初めてカラー版を観たことになる。

実在の無法者ジェシー・ジェームスを描いたものは、この後日本で公開されただけで10数本あるとのこと。流石西部のロビンフットと言われただけのことはある。南北戦争直後のミズーリ州、セントルイス・ミッドランド鉄道が、鉄道建設のため力ずくで土地を安い値段で買い上げ、それに憤慨したフランクとジェシーの兄弟が列車強盗となり、最期ノースフィールド銀行襲撃に失敗、仲間のボブ・フォードの裏切りで射たれるまでの物語。

ジェシーに扮するのはタイロン・パワーで、新聞社主の姪ジー(ナンシー・ケリー)と愛し合い結婚、悪の道と愛との板挟みの悩みながらの捻じ曲げられた生き方をありきたりのヒーローに留まらない役どころを演じきったと言える。ヘンリー・フォンダが兄フランクを、ランドルフ・スコットが、ジーに恋心を抱きながらも、ジェシーを助ける保安官を演じるが、二人とも若さに溢れる時代、主人公になるべき二人が、これだけの役では、観ている方があまりにも欲求不満に駆られたのだった。そのほかにも脇を締める人たちが・・・鉄道会社に雇われ、農民たちやジェームス家の土地を安く買い上げるブライアン・ドンレヴィは落日の決闘1946」で悪役トランバスに扮し、ヴァージニアンに向かって「陽が落ちるまでに町を出ろ」の名言を吐いた。ジェシーに自首すれば、数年の刑で済むと騙し、保安官や判事を馘にし、判決を死刑にする鉄道会社社長は、{駅馬車1939」のウイスキー商人で、最初にアパッチの矢で倒されたドナルド・ミーク。同じ「駅馬車」で女性の護衛を買ってでる賭博師のジョン・キャラダインは、特赦と賞金に眼がくらみ、丸腰のジェシーを背後から射ったボブ・フォードに扮した。

このジェシーを中盤で若干暴徒化するものの、無法者ながら正当化している。逆に鉄道会社の無法に立ち向かう正義とさえ感じる。冒頭からドンレヴィの暴力により、母親が殺されることから、街の酒場で、ドンレヴィを倒し、お尋ね者になるが、本来正当なる決闘と見做されるものだろう。ただジェシーを正当化するのに全力を注いだことから、鉄道会社の横暴が目に余り過ぎとも言える。
全般的に、ジェシーとジーとの恋愛、妻を愛する一児の父親としての葛藤が話の中核を成し、愛の擦違いといった心情が強調されていることから、ジェシーの義賊としての精神的疲弊や堕落のきっかけまでが描かれているところが西部劇らしくないが、活劇面でも、列車強盗での馬の疾走シーンやノースフィールド銀行襲撃での歯切れのいい射ち合い、馬と一緒に、ショーウインドーをぶち破るシーン、断崖から馬もろとも水中に身を投ずるロングショット等のアクションシーンも素晴らしかった。

(編集子)ひさしぶりにブライアン・ドンレヴィの悪役ぶりを見た。小泉解説に少し付け加えると、前にも本稿で書いたが ”大平原” での憎たらしさもさることながら、なんと言っても徹底した演技で見るものを圧倒してしまうのがクーパーと共演の ボージェスト だと思っている(本作品で公開年のオスカー助演男優賞にノミネートされたそうだ)。この映画にふれる人があまりいないのが残念だが、良き日の大英帝国を背景にして、活動場面は砂漠に展開するフランス外人部隊という組み合わせが実によくできている。若き日のスーザン・ヘイワードが出るこの作品はもっと評価されてもいいと思うのだが。本題に戻れば、やっぱりタイロン・パワーてのは顔だけの人だったなあ、と思わせるエーガだった。若いころのランドルフ・スコットも懐かしい顔である。

(余計なことだが ボージェストのDVDはアマゾンで新品980円(在庫1枚)、中古100円、ゲーリー・クーパー大全集(全10作品)1675円)に収録されているとのこと)。