古き良き時代のエーガ(2) 陽のあたる場所   (普通部OB 船津於菟彦)

前回の「探偵物語」についで、普通部時代に先生引率で鑑賞した映画。1951年度のアメリカ映画で「探偵物語」「巴里のアメリカ人」「欲望という名の電車」そしてこの「陽の当たる場所」の4本がこの年を代表される映画とされている。文部省推薦映画にも選ばれている日本公開は1982年9月だから我々が見たのは普通部2年生,部歌にいう「若き学生」のころ。その時のパンフレットをとってあったので御覧に入れる。紙は「わら半紙」の様な雑な物で多分日比谷映画で観たのだと思われる(当時ロードショウは「東劇」「有楽座」「日比谷映画」の何れか)。

 

何と言っても「モンティ」=モンゴメリー・クリフトのどこか寂しげで孤独感を漂わせる雰囲気、繊細な演技と表情は巷の女性陣の心をさらった。モンゴメリー・クリフト(Edward Montgomery Clift, 1920年10月17日1966年7月23日)は、アメリカ合衆国ネブラスカ州オマハ出身の俳優。Montgomeryの発音はモントゴメリー「mɒntˈɡʌməri」で、愛称モンティ(Monty)はそこから来ている「地上より永遠に」にも出演。女性陣は何と言っても美女エリザベス・テイラー。可憐で綺麗。

物語は原作のタイトル「アメリカの悲劇」が示すように、本作は格差社会がもたらした数奇な運命を描いている。貧しく学のないジョージ・イーストマン(モンゴメリー・クリフト)は、日陰で生きてきた自らの境遇にコンプレックスを抱いている。彼は伯父のチャールズ・イーストマンに会い、彼の工場に職を得る。伯父の家で社交界の花アンジェラ・ヴィカース(エリザベス・テイラー)に会い、「出会う前から愛していた」(I love you. I’ve loved you since the first moment I saw you. I guess maybe I’ve even loved you before I saw you.)と告げるが、それは裕福な身分への憧れが反映されているからだ。彼はひたすら「陽のあたる場所」を求めて彷徨ったのだ。しかし、身分の違い遠い存在と思っても居る。同じ職場にいたアリス・トリップ(シェリー・ウィンタース)は身よりのない娘で、映画館でふと隣合わせになり、女性の多い職場で社員の交際が禁じられていたにもかかわらず、2人の仲は急に深まる。ジョージは妊娠した彼女に堕胎をすすめるが、医者は引き受けてくれなかった。アンジェラとジョージは夏を別荘に過ごす仲になっていき、アンジェラの両親も2人の仲を許していた。

そして、アリスは結婚を迫り、承諾しなければ自分との間を公にすると脅した。翌日、出世の妨げになるアリスを溺死させようと、彼女を湖に誘う。ところが、アリスのひたむきな愛情を知り、彼女を溺死させる気持ちを失う。アリスは逆に恐怖にかられ、ボートの上に立ち上がったため、ボートが転覆、アリスは溺死する。ジョージは裁判にかけられ、殺意のあったことを認めたが、犯行は否定する…。死刑が行われる日にアンジェラは獄舎にジョージを訪ねて「永遠の愛を誓った」ジョージはアリスが溺れた時例え殺人をしていなくても心の中で殺人を犯したと同じ事だと電気椅子へ廊下を落ち着いた足取りで歩いた。

この裁判の時のシーンが今でも心に残っている。法廷のボートが運び込まれ、フランク・マーロウ判事(レイモンド・バー(Raymond William Stacey Burr)が鬼のような形相でジヨージの犯行を迫る。そり後刑事物でも活躍したが、まだあのボートをオールで叩くシーンは目に焼き付いている。名演技だった。