ひさしぶりの西部劇 (34 小泉幾多郎)

 今年7月「ゴールデンリバー」9月「荒野の誓い」と珍しく本格的西部劇が二本公開された。

前者はアメリカで西部劇が廃れるなら、フランスでと、ジャヤック・オーディアル監督がアメリカの俳優を中心に西部劇を復活してやろうと思ったかどうか。
仏アカデミー賞4部門で受賞したりで、観たかったのだが、私事でバタバタしたりで観損なった。後者はどうしても観なければと思いつつも、中々腰が上がらず、横浜ブルグ13で上映終了の3日前の9月24日に観ることが出来た。

その感想を直ぐにでも書こうと思っているうちに、9月28日、マンションの階段を駆け下りて、不注意にも転倒、後頭部を打ち付け、近くの脳神経外科に駆け込み、裂傷部分を4針(今はホチキスで4か所)止めることに相成り、CT断層検査では今のところ頭脳への影響はなかったことは幸いで、ご心配なく。とのことで、書くのが遅れてしまった。残念ながら東京でも上映は終わりになってしまっていて、当館では9月6日から上映されていたが、当日は、9時からの上映で一日1回のみ。こんなに早い時間に映画館で鑑賞するなんて初めての経験、しかも驚くなかれ、観客たったの4人。西部劇人気も地に落ちたもの。それでも久しぶりTVでない映画館での西部劇の醍醐味にどっぷり浸かり、のめり込んで感動してしまった。

 先ずは「荒野の誓い」という邦名、古き良き時代のB級西部劇のネーミングに逆戻り、原題Hostiles(敵対者たち)に近い題名が欲しかった。物語りは、インディアン戦争終息後のアメリカ西部、その戦争で功績を挙げた大尉が、7年間捕らわれの身となっているシャイアン族の首長イエロー・ホークとその家族を故郷でもある居留地まで護送するよう命じられるところから始まる。

分断された社会、相手を憎むように教えられてきて、とても理解し得ないと思っていた人間同士がパーティを組んで、荒野を旅するロードムービーなのだ。主人公大尉はバットマンを演じ、西部劇では、「決断の3時10分」のリメイク版に主演したクリスチャン・ベール。 インディアン戦争がもたらした心の闇を抱えながら首長を護衛する任務に就いた大尉、コマンチ族に家族を殺された女性、首長イエローホーク等々の好演技、その旅の中から白人とインディアンという差別的な戦いをを背負わされて来た虚無感から、最終的には普遍的なヒューマニティを謳いあげるという物語りは感動的だ。それに加え、撮影画面の素晴らしさ、大自然の姿が、朝な夕なに、晴天の時も、降りしきる雨の中に描かれる。これが日本人マサノブ・タカヤナギの撮影監督というから誇らしい。

その画面に優しく奏でられるマックス・リヒターの音楽が、チェロとピアノを主に、あたかも宗教音楽のように深い底から鳴っているような厚みと深さを加えていた。最後に決闘場面で全てが終わった後、大尉がシカゴ行きの列車に乗る女性と首長の孫の二人を見送った後、動き出す列車の最後部に飛び乗るところで、救いで終わるところ、他愛なくも思えるが感動的でもあった。

(中司)

西部劇の新作があったなんで知りませんでした!

決断の…..ってのはグレン・フォードでしたっけ? これからはも少し真面目に新聞を読んで見逃さないようにします。
それもそうですが、頭のけがとはまた大変でしたね。オヤエが隣で髪をそるのかなあ、なんて気楽に言っています。なんせ階段の下りは怖くなりましたね。また、近々お会いします。
(小泉)
「決断の…」は、グレンフォード主演作のリメーク版で、ラッセル・クロウも出てました。