エーガ愛好会 (219)  弾丸を噛め  (34 小泉幾多郎)

表題の「弾丸を噛め」は、弾丸を加工した被せものを虫歯の治療に使うことから、どのような困難が立ち塞がっても、弾丸を噛むように、歯を食い縛れということで、このエーガの中に男の友情、若者の成長、女性の勇ましさなど過酷な耐久レースの中に、魅力が詰まっている。

自然の美しさや猛威なども描かれ、自然と人間ドラマが迫力ある映像と共に素晴らしいと言えるのだが、肝心のレースそのもののスリルはあまり感じられなかった。1908年デンバーポスト新聞主催の馬と共に進む人馬一体の1120キロの耐久レースで賞金2000ドル。

主演サム・クレイトンにジーン・ハックマン。誰よりも馬を愛し、馬の状態を案じ、レースに参加するすべての人間を愛するような人物。その友人で皮肉屋の賞金稼ぎル-ク・マシューズをジェームズ・コバーン。ミスターと呼ばれるカウボーイがベン・ジョンスン。川を渡ろうとした老カウボーイ、馬と共に激流にに飲まれ、やっとのことで這い上がったが、心身共に衰弱して、サムに看取られながらあえない最期。カウボーイ、バーテン、炭鉱夫、生きるために何でもやったが、何者にもなれなかった。これに勝てば初めて人から認められるんだと呟きながら息を引取る。最大の難関である砂漠の横断で馬を酷使し過ぎた若者(ジャン・マイケル・ヴィンセント)、馬を殺しサムの指示により埋葬する。メキシコ人歯痛のため脱落しそうになったがが、サムの気転で、弾丸を歯冠代わりに被せられ、なんとかレースに戻ることが出来た。英国紳士ノーフォーク卿(イアン・パネン)の馬が足を折り自ら銃殺しなければならなかった。唯一の女性ケイト・ジョーンズ(キャンデス・バーゲン)は、囚人となり線路工事に従事する恋人を開放すべく監督官に銃を突きつけたのは予定の行動。恋人の反逆に遭い予定外に馬を2頭盗られたが、銃撃戦の末何とか取り返すことに成功し、ケイトは助けた恋人に愛想をつかすことになる。

過酷なレースのフィナーレは。馬を気遣い馬を降りた満身創痍のサムがゴールに向かう。後を追うルークも馬を降り、二人一緒にゴール。周囲の観衆から大歓声のうちに終わりを迎える。

(編集子)なかでもジェイムズ・コバーンは荒野の七人で始めて出会い、シャレードではユニークな悪漢ぶりに感嘆し、以後常に一癖ある人物を演じる俳優で、方やジョン・フォード・ウエインもの常連、ベン・ジョンスン、もひとりこれもキラリと光るマイケル・ヴィンセントとくれば満足。ジーン・ハックマン? この人はどーゆーものかあまり好きではないのだが、いや、ご苦労であったな。

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bite the bullet”は、直訳すると、「弾丸を噛む」という意味ですが、「歯を食いしばって耐える」「いやな状況に敢然と立ち向かう」という意味になります。

この表現は、野戦で麻酔なしで外科手術を受けなければならなかった兵士が、弾丸を噛んで歯を食いしばって痛みに耐えたという慣習が由来となっています。

bite the bullet”という表現は、何か困難なことや不快なことが起こったときに、その困難な状況や不快な状況に歯を食いしばって耐えて、勇気をもって、敢然と立ち向かう様子を表します。

相手が何か困難なことや嫌なことをしなければならないというときに、それを実行するように励ます場合に、“Bite the bullet.”と言うと、「我慢して」「困難に立ち向かえ」「ぐっとこらえて」「歯を食いしばって耐えて」という意味です。

“Just bite the bullet and do your best.”
「ともかく困難に立ち向かい、最善を尽くせ」