自然との共生実験ーさがみこベリーガーデンの体験 (高校OB 山川陽一)

先月のブログでは太陽光発電と景観問題について書きましたが、今回はさがみこベリーガーデンの自然と景観についてお伝えしたいと思います(「自然エネルギーのつくり方」参照)。

さがみこベリーガーデンは自然の宝庫です。都心からこんな近くにこんな豊かな自然が息づいているなんて、ビックリです。

私たちがこの地に足を踏み入れて3年、農園づくりに汗を流してきましたが、その間にビックリするほどいろいろな生き物たちとの出会いがありました。イノシシ、サル、シカ、キツネ、タヌキ、ハクビシン、アナグマ、モグラ。アオダイショウにトカゲ。バッタ、カマキリ、カミキリムシ、テントウムシ、キリギリスにコウロギ。春はウグイス、秋の空には赤トンボが飛び交って、草むらからはキジの親子が顔をだします。夏場の雨の日にはヤマビルの対策もしっかりしないといけません。

つい先日も、朝、農場の見回りに歩いていたらブルーベリーの鉢の陰から突然キツネが飛び出して、電気柵の間を一直線にすり抜けていきました。自然がいっぱいです。でもね、観光農園にお客様をお迎えすることや生産農園としてしっかり収穫することを考えると、いいね!いいね!とばかりも言っていられません。鳥獣害の対策や害虫防除に頭を悩ます毎日です。

現在私たちはソーラーパネルの下で養液ポット栽培という形で1100本のブルーベリーを栽培しているのですが、次々にいろいろな問題が起きてきます。丹精込めて育ててきたブルーベリーの苗木がカミキリムシとかコウモリガの幼虫にやられて突然枯れてしまうこともしばしばだし、養液栽培の配管がハクビシンだかタヌキ?に食いちぎられる被害も後を絶ちません。防草シートの上は動物の足跡だらけ。ブルーベリーの鉢が置いてある農場の周囲には5段の電気柵を回してあるのですが、果たしてどれだけ機能しているのでしょうか??? 動物たちと知恵比べですね。

この春は西側の農道を挟んだ向かい側の沢沿いに生えているミズキに大量のキアシドクガの幼虫(毛虫)が発生してあっという間にミズキの若葉を食い尽くし、その大群が大挙道を超えて押し寄せてきてブルーベリーの葉を食い始めました。到底人力では駆除しきれない量なのでやむなく少量の薬物を使いました。来園者が手で摘んで食べるブルーベリーの実に薬物が残留していたなんてことは万が一にも起きてはいけませんし、花粉交配の受粉用に飼育しているミツバチへの影響も念頭に置かないといけません。こんな現実を突きつけられると、無農薬培は聞えは良いですが、果たして100%農薬を使わない農業がどれだけ可能なのでしょうか。

そして目下の最大の悩みは鳥害対策です。一般的に鳥害対策はネットを張りますが、ソーラーシェアリングの架台が邪魔をしてネットを張るのも一苦労ですし、張れたとしても、コストが馬鹿にならず、維持管理も大変です。猛禽類を模した吹き流しを付けるとか、テグスを張り巡らすとか、ドローンを飛ばして上空から音声を流すとか、いろいろな案が出ていますが、はてさて、どうしたらいいのでしょう。来年以降本格的なブルーベリーシーズンを迎えた時どうなっているか。みなさん、なにかいい知恵があったら教えてください。

かつて、この場所は地域の人たちが農地として開拓し、家族総出で作物を育て、美しい里山の風景を形作っていたはずですが、時代と共に農業を維持継続することが困難になって、耕作放棄され、草ぼうぼうの荒廃農地に変わっていったのでしょう。私たちはその地を借り受けて、ソーラーシェアリングという方式で発電し営農し観光農園+生産農園として蘇らせたいと考えています。

観光農園の開園まであと半年。この地の素晴らしい自然を壊さないで事業を成り立たせることがどんなに大変か身に沁みて感じるこの頃です。かつての里山の姿をそのまま再現できるわけではありませんが、息づいている自然と共生しながら新しい里山の風景をつくっていきたいのです。「自然との共生」・・・とてもいい言葉ですが、実際にやるのはとても大変。ウーン、でも、やるしかないですね