1964年公開の「荒野の用心棒」により、映画界は突然新しいショックに見舞われたが、同じ年に制作されたこの映画は日本公開が、1967年のこともあり、それ程話題にならなかった。監督はマカロニウエスタンで、セルジオ・レオーネと双璧と言われたセルジオ・コルブッチ。主演はハリウッドでは、悪役の助演者として目立つ存在だったキャメロン・ミッチェル。どうやら当時イタリヤで、バイキング役で多く出演していた折に、この映画に出演したようだ。マカロニウエスタン初期の作品だけに、アメリカ従来の西部劇に近く、マカロニ独自の残酷趣味や大量殺人、非情さがそれ程には感じられなかった。
映画の内容は、冤罪で服役中の主役ミネソタ・クレイ(原題名)が、眼を患っていて、見えなくなる前に真犯人を明らかにしようとして、脱獄するところから始まる。クレイは生まれ故郷のメサの町へ向かうが、二人の女性に出会う。山賊(フェルナンド・サンチョ)の情婦(エセル・ロホ)とクレイの友人に育てられている娘ナンシー(ダイアナ・マティン)。二人ともに美女。手首に母の形見という半分に切った金貨が付けられているブレスレットで娘と判る。このブレスレットが最後に重要な役割を果たす。メサの町は、山賊とクレイが仇と知った保安官になっているフォックス(ジョルジュ・リビエール)の二大勢力がせめぎ合っているが、情婦の再三にわたる裏切りもあり、結局フォックスが山賊一味を倒し、最後に、クレイとフォックスとその子分5人との対決になっていく。
クレイの眼病は進み、ほぼ失明に近く、フォックス一味との決闘を夜を選ぶように持っていく。「荒野の用心棒」が、黒沢明の「用心棒」を原典としたように、この映画も、勝新太郎の「座頭市」を真似していることは間違いないと思われる。クレイは,フォックスとその部下を暗闇に誘い出し、足音や撃鉄、銃声、息ずかい等の音を頼りに、座頭市殺法で、部下5人を次々と倒し、最後は、娘ナンシーが人質にとられたところで、腕のブレスレットの一瞬の音に反応したクレイが相手を見極め自分を嵌めた男フォックスを撃ち倒す。潔白を証明する唯一の証人を殺してしまったが、酒場でフォックスの証言を聞いた娘のお蔭で潔白は証明されるのだった。
最後の最後、眼鏡をかけたクレイが娘を恋人に託し皆に別れの挨拶。驚いたことにその眼鏡を宙に放って二発狙撃。撃ち抜かれたレンズを手前に荒野へ消えていくガンマン。そんなに見えるようになったのか?白内障の手術の結果?
(中司)これを見る気になったのは、キャメロン・ミッチェルが主演している、と知ったからだ。小泉さんご指摘の通り、いくつかの映画で、悪役ばかりみていたのでへえ、あいつが主演?という興味と、誠に不思議なことにわが灰色の脳細胞が全くゆかりなく、キャメロンのある顔を思い出させたからだ。その映画はリチャード・イーガンと そして、実に、あの、ドロシー・マローン。ミッチェルはまったくいいところのないさえない悪役だったのだが、どっか遠いところをぼんやり見ているような、人生にあきらめをつけてしまったような、あるショットの中の表情を思い出した。そんなわけで、キャメロンにはすまないがわがそのなかのドロシーの写真をあげておく。 映画そのものがマカロニ仕立てだったとは知らず、あまり舞台になったことのないミネソタでの西部劇?と思い、まじめな小泉さんには申し訳ないが、そんな気持ちでラストシーン(レンズを撃ち抜かれた眼鏡に太陽が反射する)を観た。なお、この写真を探していてこの映画にはアンジー・ディキンソンが出ていたのを知った。自慢の美脚をあらわすシーンはなかったように思うのだが,ごひいきが二人もいたのなら、DVDを探そうかな。
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