中国の赤ワインを見つけた。品種は「蛇龍珠」という、いかにも中国人好みの縁起を担ぐ名前である。中国山東省で生まれの赤ワインを初めて飲んだ。実に美味かった。そして嬉しかった。私は昔から自慢していることがある。私が1942年9月6日に山東省青島で生まれたことである。
青島はドイツが19世紀末に植民し造った町である。西洋風なお洒落な雰囲気が今でも残る大都会。中国ワインの名前は「CHANGYU」という。まるで高級な紹興酒のような味がした。感激し涙がこぼれた。これならば麻婆豆腐と美味くペアリングできるだろう。目を閉じると青島の真っ青な海が浮かんできた。
ソムリエ萩野谷岳さんは丁寧にワインの楽しみ方を説明された。ワインをより深く楽しむための「発見」というテーマである。ナイアガラのスパークリングワイン、グルジア産の白、中国山東省の赤チャンユー、甲州完熟甘口ロゼが並んでいた。
「テイスティング技法」の基本は、目(外観)、鼻(香り)、口(味わい)と説明された。そして「ペアリングの考え方」は味の方向性に合わせる、色合わせ、食感で選ぶという。なるほど納得し、テーブル中央にお洒落に盛り付けられた料理を熱く見つめた。
濱田年古さんは、女性シェフに間違いないと思う。和風の重箱にワインのペアリングに合う料理を準備された。実に心こもるホスピタリティ。手の込んだ山芋のソテー、ミックスナッツの蜂蜜漬け、赤カブのマリネなど彩も鮮やかで素晴らしいワインとのペアリングだった。