吉川光彦夫妻は、先日 ”懐かしき日々” で書いた、編集子第一回の滞米中、現地で紹介されて以来の家族ぐるみの親しい仲である。当時2歳半だった娘は信子夫人を ノブ―、ノブ―と言ってなついてくれたので、夫婦二人で出かけるときには安心して預かってもらえたし、現地での生活が長かったので、何くれとなく頼りにしていた。帰国後もHPを通じてお付き合いが続いている夫妻は退職後古都奈良に自適しているのだが、絵心のあった吉川さんは余暇をもっぱら絵を描くことに充て、今は絵手紙を折に触れて送ってくれる。手紙には近況やら奈良のことなどがソフトなタッチで書かれている。筆不精の小生は申し訳ないがもらいっぱなし、なのだが、あらためて彼の充実した老後、に心温まる気がする。
日本ではサラリーマンが一度職を離れると、急速に社会との接点が減少するのが常である。この社交性の減少が個人の老後の在り方を左右する大きなファクタであろう。”仕事” から離れて一個人となったとき、貴重な時間をどう過ごすか、千差万別ではあろうが、”趣味” を持つ人の時間が持たない人よりも豊かなものであることは間違いなかろう。吉川さんからユーモラスな絵手紙をもらうたびにそう感じるし、”趣味” と言えるかどうかは別として、数多い、中には命を預けあったことさえあった、心の許せる友人を持っている自分の幸せを改めて感じる。