先日、”地下室のメロディ” を見たとき、実は ”死刑台のエレベータ” とごっちゃにしていたことは書いた。また、やってしまった、というのがこれである。新聞で放映を知り、録画しておいてみたのだが、実は ロバート・フランシス の遺作になった ”彼らは馬で西へ行く” とごっちゃになっていて、”ケイン号の反乱” で気に入ってしまったフランシスに久しぶりに会うつもりだったのだ。ところがタイトルからして ジェームス・スチュア―ト で始まるのだから、間違いはすぐ分かった。しかし出演者を見ていくとハリー・ケリー・ジュニアだのアンディ・ディヴァインだのと,フォード一家の面々が出てくるではないか。此処でようやく、ジョン・フォードという事に気がついて、ひさしぶりのフォード節を楽しもうと腰を据え変えた。
スチュア―トと親友役のリチャード・ウイドマークが開拓民たちの中で、以前に子供をさらわれた、という話に同情して、コマンチ族のところに乗り込み、首尾よく若い女性と少年を連れ帰ることに成功する。しかし女性の方が昔のことを覚えていて帰ることに同意するのだが、少年のほうは自分はコマンチだ、と言い張って抵抗する。とにかく二人を連れ帰って、親元に返し、落着となるはずだったのだが、そのほかの開拓民は彼らを軽蔑し、露骨に差別する。そして少年はあろうことか食事用に与えられたナイフで人を殺してしまい、形ばかりの裁判で絞首刑にされてしまう。此処に至るまでの偏見やコマンチ族に対する憎悪など、現在の人種差別問題につながる暗い話題がテーマで、期待していたフォード調とはかけ離れた物語だった。しいて言えば救いはアンディ・ディヴァインの、あの ”駅馬車” 以来の変わらない飄々とした演技がうれしかったが、ま、見終わって、フォードは何を言いたかったのか、という疑問だけが残る、はっきり言って後味のあまりよくない映画だった。小泉西部劇博士のご意見を拝聴したいものだ。
感想と関係ないが、この映画を見るきっかけになった、ロバート・フランシスのことを改めて考えた。小生が見たのは,長い灰色の線 と 実質的なデビュー作 ケイン号の反乱 だけだが、灰色の線、の方の印象はほとんどなく、ケイン号での初々しい新人少尉役でのデビューの印象だけしかない。期待されながら、自動車事故で早逝してしまい、ケイン号での相手役で期待されていたメイ・ウイン(この芸名は原作での役の名前をもらったもの)もすぐ忘れられてしまった。ハリウッド全盛時代の一齣としてこのふたりのことはなんとなく心に残っている。
余計なことだが、”ケイン号の反乱” は読む価値のある本であることを付記しておこう。映画は変質狂的な艦長をハンフリー・ボガートが好演。サブキャラクタのヴァン・ジョンスンとフレッド・マクマレーに挟まれて、主人公のウイリー・キースを演じたのがフランシスである。嵐の中で起きた反乱騒動の軍法会議を裁くホセ・ファーラーの重厚な演技が印象的だった。
ウイキペディア解説:
ロバート・フランシス(Robert Francis、1930年2月26日 – 1955年7月31日)は、アメリカ合衆国の俳優。 「ケイン号の叛乱」の主演等でその後を嘱望されるも、公開翌年に自ら操縦する飛行機の墜落事故にて25歳の若さで亡くなった。