エーガ愛好会 (233)クライ・マッチョ  (34 小泉幾多郎)

当時91歳のクリント・イーストウッドが監督デビュー50年40個目のアニバーサリー作品。題材は落ちぶれたカウボーイと少年の旅、ロードムービーを通して語られる人生から、西部劇と言えないこともないが、時代は1979年で背景はメキシコ。馬でなく車。ネオ・ウエスタンとでも言えるかも知れない。イーストウッドはローハイドやマカロニウエスタン時代から、タフガイ、ゴースト、人生の導師、謎の男と形は変わってもその姿自体や、その悠然たる歩きに変化はなかったし、この映画でも変わっていない。

ストーリーは若き時代ロデオ界のスターだったマイク(クリント・イーストウッ
ド)は落馬事故以来、数々の試練を乗り切りながら孤独な一人暮らしを送っていた。或る日雇い主ハワード・ポルク(ドワイト・ヨアカム)から、別れた妻レタ(フェルナンダ・ウレホラ)に引き取られた10代の息子ラフォ(エドアルド・ミネット)をメキシコから連れ戻して呉れと依頼される。母親の男遊び等に愛想をつかした息子は、闘鶏用の鶏と盗みで生きて来た。ラフォを探し出したマイクは二人で、車を盗まれたりしながらもメキシコから米国への旅を始める。二人に迫るメキシコの警察、レタの放った追手。二人の絆ガ胸にこみ上げる。助演男優賞の闘鶏、チキンでないマッチョと命名された闘鶏が車の中でお喋り、銃を持った敵に飛びかかる等の活躍も。男優賞は元カウボーイ、爺さんだが、立ち姿は若々しい、女に好かれ、馬を乗り回し、機械に強い。最後は息子の父親の出迎えを受け、息子は父と共に無事帰還。この後父と息子がうまくやれそうかどうかには関心はあるのかないのか。マイクは旅の間に触れ合いが印象的だったパブの女主人マルタ(ナタリア・トラヴェン)のパブへ直行しダンスへ。まだまだ若い。音楽がマーク・マシーナと言う人。パブからは、ボサノヴァのようなシャンソンのようなラテンSobor a Miで唄はEydie Gomeが聞こえてくる。

冒頭のスタートは、カントリーで、マイクが村の中を走っている間、Fina A New
Home、唄はWill Banister。全般的に年の離れた男二人のロードムービーだが、特に強調することもなくさらりとした描写の中に、若き頃ヤンチャだった年寄りの過去に対する悔恨を背負った主人公の弱さとやさしさの中に、逆に頑固で力強く自分の未来に限界がないような気がしてくる。

(グーグルの解説転載)

タイトルの『クライ・マッチョ』とは、「マッチョ、鳴け!」という意味と「男らしく泣け」のダブルミーニングだと思われる。 年代も環境も違う、出会うはずのなかった2人が旅を通して絆を深め、生きることの意味や明日への希望を見出してゆく、人生への問いかけを秘めた感動のストーリー。