保健所の現場から – 犬・猫の問題       (会社時代友人 斎藤博)

”置き配とタブレット” 稿についていろいろな追稿をいただいたが、中で犬・猫との共存についていろいろな情報が寄せられた。日本では各自治体の保健所がその始末にあたっているが、その実態について一般人はあまりよく知る機会がなかった。一般企業を卒業されたあと保健所現場での体験をされた斎藤さんからの情報である。今後、視野を広げて保健行政の現場について、同氏の発信に期待したいと思う。

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■ 犬の糞尿

保健所に入る苦情は、犬猫の糞尿に関することが多いと前の投稿に書きました。ネットで調べてみますと、平成29年度インターネット都政モニター「東京におけるペットの飼育」のなかに、「Q10ペットによるトラブル」と言う項目がありました。

https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/01/29/01.html

他人のペットが原因で被害を受けたり、迷惑に感じたりしたことがありますかという質問に、総数458の内半数以上の方が、「糞尿の不始末や悪臭」をあげています。犬だけでなく、猫、もしかして鳩などの鳥も含まれている可能性はあります。少なくとも、糞尿問題は多そうだということです。

そう言えば、船津さんのお話のように、公園での糞の話は、あまり聞いたことがありません。今日、少しあちこち歩いてみて、いくつか思い出しました。区立公園や区道の一部、特に人の往来の多いところなどは、週に1回以上、区と契約している会社(シルバーさん含めて)が掃除をしています。鳥の糞は残っているのですが、犬猫のものは全くありませんでした。

怒っている方からの電話の内容を思い出しますと、自分の家の何処かに糞を放置されて、堪忍袋の緒が切れて電話してきますね。駐車場の暗がり、玄関の脇、植木鉢の陰、電柱や街灯の根本。一度糞をされると、ほぼ毎日されるパターンが多いですね。時間があれば、保健所の職員が現場を確認に行き、事情を聴取し記録します。最初はエチケット看板をお渡しし、それでも駄目で、強烈な香りを放つ匂い作戦などをお試しいただきます。相手がわかっている場合だと、私達が伺ってお願いします。相手がわからず、防犯カメラを設置して、警察に届けるように話したこともありました。最終的には訴訟沙汰になったと聞いたこともあります。猫の糞尿については、これ以上に悲惨です。またの機会にお話します。

私の場合、犬の散歩を見かけることは多いのですが、シャベルと袋の代わりに、小さな帆布の手提げを持って歩いている方を見かけますね。お犬様が落とし物をすると、手提げから袋を取り出し、器用に袋に手を突っ込んで落とし物を拾っている姿を見たことがあります。ティッシュでお尻を拭いている御仁もいらっしゃいますが、拭く必要はあるんでしょうか。尿に関しては、水でしっかり流してほしいと思います。一回の散歩に500mlのペットボトル程度の量では少なすぎます。

平井さんのフランスの話しはすごいですね。ネットで検索すると、フランスの話しがボロボロ出てきます。私の自宅周辺や歩き回るところには、放置糞は数えるほどで、船津さんのお話のように、日本の実情はすごく改善されていると思っていました。しかし、担当部門に勤めてみると、残念ですが糞問題は悪質化しているように感じます。私が毎日歩いている場所も、掃除されると翌日には再び落ちています。だから最悪なのです。

犬の問題がうまく行っていないから、各行政のホームページには、必ず犬の問題の項目があります。ちなみに、東京都福祉保健局では「犬の飼い主の皆様へ」と言うサイトがあります。

https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kankyo/aigo/dog/dog01.html

■ 野良犬

東京都では野良犬は少ないです。昭和55年度で都が保護した犬(成犬と子犬)は23,000頭あまり、令和2年度は140頭ほどです。

動物は法律上「物」なので、野良犬も遺失物として扱われます。その意味で警察も絡んだ上で、情報は紙ベースですが、都と保健所とで昔ながらの方法で共有化されています。逃走した犬など飼い主のわからない犬は、割と早く周知され捕獲され保護される場合が多いです。野犬と言われていた昔とは様子が違っています。今年6月から新しく登録される犬のマイクロチップの装着が義務化されます。いずれ情報の共有化も始まりますので、野犬はますます減るのではないでしょうか。

最近では、野良犬ではなく、多頭飼育が問題ですね。ゴミ屋敷の問題と同様、多頭飼育者の一部は、病気として扱われ始めていますが、セルフ・ネグレクトが強く関係していると言われています。

ちなみに、65歳をすぎると、良心的なショップやNPOでは、動物を売ってくれません。飼い主の体力がなくなって、保健所で引き取ってくれと言う相談も来ることがあります。実際、動物の譲渡先を探すのがとても困難であり、行政も引き取りが出来ません。最近では、老犬・老猫ホームという企業も増えてきました。犬も猫も15年以上生きるようになってきていますからね。

■ 狂犬病

狂犬病清浄国・地域(2020年)は日本以外では、オーストラリア、アイスランド、ニュージーランド、ハワイ、グアム、フィジー諸島しかありません。清浄国とは、狂犬病が発症していない国と地域という意味です。

2020(令和2)年に、フィリピンから帰国後、狂犬病を発症した方が亡くなった例がありますが、フィリピンでの感染のため、日本は狂犬病清浄国のままです。人間での狂犬病の潜伏期間は1〜3ヶ月です。発症前にワクチン接種が出来ないと、発症後数日で確実に死に至る恐ろしい感染症です。

狂犬病には犬という字が入っていますが、犬以外に、ネコ、コウモリ、アライグマ、キツネなどのあらゆる動物から感染します。噛まれるだけでなく、引っかかれるなどした場合でも感染します。海外に行かれる場合は、必ず狂犬病ワクチンを打ちましょう。犬における狂犬病予防接種は、日本では毎年予防注射を受けなければならない決まりです。しかしながら、最近の接種率は下がっているのが実情ですね。もっと、狂犬病の恐ろしさを訴えてゆく必要がありますが、現在の保健所では、いろいろな意味で無理だろうと思います。