エーガ愛好会 (101)  追われる男  (34 小泉幾多郎)

監督「大砂塵1954」のニコラス・レイ、主演ジェームス・キャグニー、ギャング役で有名だが、西部劇も「シスコ・キッド1935」「オクラホマ・キッド1939」「悪人の貢者1956」がある。

冒頭主題歌 Run For Cover が唄われ、ニューメキシコのアステカ遺跡国立公園の山と渓谷が美しき景観の中、キャグニーが馬を走らせる西部劇らしい雰囲気から始まる。直後人の気配にピストルを構える。此処から、初老と若者ジョン・デレクとの旅は道連れが開始。キャグニーは妻と息子に死別した過去があり、デレクと疑似父子の関係の心理サスペンスが善と悪、幸と不幸のせめぎ合いが主題となる。

出会いから、樹々の向こうに煙が立ち上り列車との遭遇で、二人が鷹を撃ったことから、強盗団と誤解され、シェリフとその街の追跡団に撃たれ、二人とも負傷、特にデレクは脚に大怪我を負うことになる。農場に担ぎ込まれるが、手当したその農場の娘がヴィヴェカ・リンドフォース。スウエーデン出身で当時第二のガルボかバーグマンかと期待されていたが、そこまでは行かなかった。エロール・フリン主演の「ドンファンの冒険1949」で王妃マーガレットに扮したのを見たことがあるが、それは美しかった記憶がある。

そのヴィヴェカとキャグニーが恋愛関係になり結婚する。街の人たちの信頼を得たキャグニーは、シェリフに推され、デレクを助手にする。ある日アーネスト・ボーグナインを頭とする強盗団に銀行が襲われ、追跡するも、コマンチ族の勢力範囲に入り込み町民たちは恐れをなし帰ってしまう。キャグニーとデレクのみで追跡するも強盗団もインディアンに殺されたりして、最後は、キャグニーとデレ
クとボーグナインの対決となる。デレクは一味と通じていたことが判るが、キャグニーがボーグナインに殺されそうになった時、良心に目覚めたデレクがボーグナインを撃ったが、ピストルが自分に向けられたと勘違いしたキャグニーに撃たれ倒れる。

以上二人の出会いから、父性の懐の大きさを感じながら、強盗団との対決と疑惑の裏切りが全編を覆いながらも、キャグニーの堂々たる振る舞い、悪漢に奪られた街の財産を取り戻すために命を張り、人のために尽くすというメッセージが伝わることで西部劇らしい終わりになった。

(編集子)ジェイムズ・キャグニイといえばまず思い浮かぶのがシカゴのギャング、というイメージだし、出てくればまず憎まれ役が多い名優だった。小生の好きなフォンダの ミスターロバーツ でもその憎々しさが面白かった記憶があるし、かたやボーグナインといえばこれまた掛値なしの敵役だ。特に 地上より永遠に でフランク・シナトラを殺してしまう軍曹役なんかが思い出される。このふたりの西部劇、ということになるとセーブゲキ党としてはぜひ見ておかなければならなかったのだが所用で見逃してしまったのが残念至極。

(飯田)小泉さんが纏めた「追われる男」をビデオ撮りしておいて昨日観ました。今月のBSシネマで、劇場では観ていなかったので、この一本を観たいと思っていた作品でした。

ジェームス・キャグニーが善人役として、珍しい作品で西部劇としてそこそこ面白いと思いました。ジャイさんもコメントしてましたが、キャグニーの映画ではジョン・フォード監督の「ミスター・ロバーツ」のヘンリー・フォンダに対する上官役が秀逸であり「ヤンキー・ドウードウル・ダンディ」が自分は好きな映画です。それに当時劇場で観た「白熱」は、もう一度是非観たいと思ってますが、テレビでは見たことが無いです。