アメリカ大統領選に思うこと  (37 菅谷国雄)

銃を持たなければ投票所に行けない、アメリカは相当傷んでいます。今正に進行中の大統領選挙を見て誰しも思うことは、今日のアメリカ社会の対立・分断の傷は相当深い、ということです。

特にこの4年間は、大統領たる最高権力者の発信がこの対立分断を一層煽り、混迷の度合いを深刻なものにして来ました。かって、民主主義を標榜する各国のリーダーとして存在し、その寛大さや自由闊達さに寧ろ憧れさえ抱いたアメリカは、何処かに逝ってしまいました。

塾祖・福澤諭吉が「文明論の概略」の執筆に当たり、手本としたフランスの政治思想家・アレクシ・ド・トクビル(1805~1859)の「アメリカのデモクラシー」の序文に「道徳の支配無くして自由の支配を打ち立てることは出来ない。民主主義に於いては、人々は自分たちにふさわしい政府を持つ」と書きましたが、2世紀近くを経た現在もなお、心に沁みる言葉となりました。

いずれ選挙の結果は確定し次の時代が始まります。専制独裁の習近平やプーチンの野望は尋常でありません。民主主義を標榜する各国が結束し、新しい秩序を模索していくことが急がれます。我が国も、周りに右顧左眄することなく信念を以って発信するリーダーの存在が問われています。世話役・事務局長が相応しい人材を総理に選んだ我が国のこれからが心配になります。

追伸: 分断・対立はアメリカだけではありません。文明の衝突、文化・宗教の対立だけでなくその原因、根っこにあるのは富の偏在にあるのでしょう。2014年に刊行され世界中で話題となった、トマ・ピケティの「21世紀の資本」を改めて読み直します。博学・諸兄妹のご高説もお聞かせください。