エーガ愛好会 (2) 西部劇だけがエーガじゃないよ!

(小泉)

 金藤泰子様からのメール拝見。ゲイルラッセルについて、インターネットからでしょうか、詳しく紹介いただき有難うございます。拳銃無宿のポスターやらポートレートやら数え切れぬほどあるのですね。拳銃無宿と言えば、スティーヴマックイーンが賞金稼ぎで活躍するTVドラマのこと、映画の方、よくぞ見つけてくれました。それにしても、便利な世の中になったものです(中略)。「昔の映画をビデオで見れば(1990年刊)を今再見しているのですが、発刊当時映画は一回見ればいい、一本勝負の観た映画は生涯忘れないという気持ちから、ビデオの出現がそれを変えた時代だった。今そのビデオもDVDになり、YouTubeになった時代へと変化してきました。映画も封切り後、時間さえ経てば、いつでも見られる時代に変化してきました。 Gisan同様に、過去の映画を推薦するとすれば、何が良いだろう?

あまた数ある中で、英国映画「逢びき」。ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番が全編に溢れるように流れている映画。この映画を推薦したいです。平凡な中流家庭の人妻のつかの間の初めての禁断の恋。不倫の誘惑への葛藤が、この曲とともに進行する。この映画以降、この曲は勿論、ラフマニノフの作品の虜になってしまったのでした。その後マリリンモンローの「七年目の浮気」、ジョーンフォンティーンの「旅愁」、エリザベステイラーの「ラプソディー」や最近の「のだめカンタービレ」等に、この第2番が登場するが、何れもピアニストが演奏しての場面、この映画では人妻の初めて知っただろう心中の激しい葛藤が、この曲と共に展開するのでした。若しご覧になっていたとしても、このコロナの時期ですし、小生もラフマニノフを聴く積りで、観たくなりました。

(金藤)

「逢引き」という映画 題名は聞いた事はありますが 観ていません。“ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番が全編に溢れるように流れている”と言う文章に心惹かれます。 ぜひ、観てみようと思います。
ラフマニノフの曲はフィギュアスケートでもよく使われていますね
他の曲だったと思いますが、パトリック・チャン 安藤美姫等が
ラフマニノフの調べに乗って滑っていたような気がします。

(菅原)貴兄の「西部劇、というだけでそっぽを向く人が多いのもよく知っている。・・・」と言う発言に触発されて、日頃、考えていることを以下に纏めてみた(またもや、小泉先輩にこっぴどくやっつけられることに戦々恐々としている)。

日本人はクソ真面目なことが大好きだ。いや、大好きと言うより、神の如く崇め奉っている。江戸時代の日本人もそうだったのだろうか。でも、落語で代表されるように、そうでなかった可能性が極めて高かったのではないか。何故、クソ真面目になったのかは、明治時代に日本に来たお雇い外国人、特にドイツ人の生き方の影響が多大にあったとのではないかと推測する。勿論、その対象が日本の教養階級であったことは言うまでもない。

今現在、例えば、文学では、直木賞より芥川賞の方が上と見られているし(一平/二太郎が直木賞の受賞者だったように、面白さでは、芥川賞は直木賞の足元にも及ばない。しかし、最近は、直木賞であっても食指をそそられる作品は余りないようだ)、音楽では、中でもオペラでは、「セビリアの理髪師」のG.ロッシーニよりも、「ニーベルンクの指輪」のR.ワググナーの方が上と見られているなど(一方はノー天気であり、もう一方は深遠そのもの)、クソ真面目が上である例は枚挙にいとまがない。

エイガも同じであって、ヨーロッパ、特におフランスのエイガに較べ、西部劇は活動写真と蔑み、一顧だにしない風潮があるのも事実だろう。人生いかに生きるべきか、が主題であるべきであると言う妄想があるからに他ならない(西部劇にも、友情あり、愛情あり、など人生いかに生きるかがちりばめられているかには気づいていないんでしょうね)。

1950年台10年間のキネマ旬報(以下、キネ旬と省略)のベスト10を見ると、初めてベスト10に入った西部劇は1953年7位の「シェイン」であり、あとは1958年1位になった「大いなる西部」のたったの2本に過ぎない(1957年9位の「友情ある説得」は西部劇じゃないと思う)。「黄色いリボン」「赤い河」も全く出てこない。当時のキネ旬が明らかにヨーロッパ、特に、おフランス映画に傾斜していたのは紛れもない事実だ(蛇足だが、左にも大きく傾いていた)。

しかし、良く考えてみると、クソ真面目を崇め奉っている人は、不幸とも言えるだろう。面白い、楽しいことをやせ我慢している面もありそうだからだ。面白いことを面白いと言い、楽しいことを楽しいと言う人生は何と素晴らしいことか!

(小泉) 昨日、KOBUKI(41年卒久米行子)さんから、アマゾンプライスというもので、「旅愁」を懐かしく観て、ラフマニノフの第2番が流れてました・・・のメールを頂戴しました。金藤さんに先日「逢いびき」を推薦いたしましたが、この「旅愁」も推薦したくなりました。ジョーン・フォーンティーンが美しいピアニスト、妻ジェシカ・タンディと息子のいる実業家ジョセフ・コットンが乗り合わせた飛行機が急遽イタリアに降りたっての不倫。こちらはラフマニノフに、セプテンバーソングがからみ、観光も楽しめるという映画でした。

(安田)過去の映画となった旧作を観る基準は、誰でも知っている名画、映画監督作品を辿る、俳優を追うなどでしょうか。

例えば、キャロル・リードの名作「第三の男」の準主役とも云うべきジョセフ・コットンが気になり、彼の出演映画を観ました。「市民ケーン」「疑惑の影」「ガス燈」「ジェニイの肖像」「旅愁」「ナイアガラ」などです。当然、共演のオーソン・ウエルズ、テレサ・ライト、イングリッド・バーグマン、ジェニファー・ジョーンズ、ジョーン・フォンティン、マリリン・モンローの作品にも興味を持ち、彼等彼女等の出演映画を観ることになります。また、演出した監督、例えば、「疑惑の影」のアルフレッド・ヒッチコック、「ガス燈」のジョージ・キューカーの映画を探して観ます。この様に出演俳優、演出の監督作品が絡み合って気が付けば104もの映画を観ていました(編集子注:このリストは長すぎるので残念ながら掲載していない)。

(小泉)安田さん、一つの映画のことから、無数の映画への発展!記憶力とジャンルの知識がなければとても書けないでしょう。

 菅原さん、映画から音楽へ。チェリビダッケのブラームスとは、相当の音楽通です。映画通としては、ブラームスはお好き?「さよならをもう一度」を思い出します。

写真提供:安田

(中司)フランス映画ってのは、望郷、太陽、恐怖、禁じられた遊び、太陽、ジャン・ギャバンやドロンのノワールものもフランス映画なら、あと5-6本見てるかなあ。あまり、見てない、というのが正直なところ。ところで、今、D-day (ノルマンディ上陸)秘話の Double Cross というのを、本当は連休までに読了の予定がまだ半分くらい、200ページまでしか終わってないが読んでる。その中に、ダブルスパイを支援したフランス女優として Simone Simon という名前が出てくる。なんか、関係あるかなあ。

(後藤)シモーヌ・シモンは清純派の女優で戦後の比較的早い時期に日本にも来たことがあります。箱根の温泉旅館で浴室で素っ裸になって(外人は当然ですから)洗い場で小便までやった事から大騒ぎになった話は有名です。シモーヌ・シニョレイほどの大物ではなかったと記憶していますがどの映画に出ていたか覚えていません。

(編集子)妙なエピソードが出てきたところで、今回はこのあたりで。