東海道から富士山を見ると右の稜線に小さな小山が見え、宝永山と呼ばれています。新型コロナ感染症新規感染者数のグラフ(本当は週単位で纏めたグラフの方が鋭い角度となりもっとはっきりする)で、第6波の大きい山の右側に宝永山によく似た小山が見えることは前報でも指摘しましたが、最近ではこの小山が二つ見られます。山が大きくないので第7波、第8波とは言い難いのですが、ここでは仮称として用いましょう。仮称第7波はどうやら乗り越えましたが、その後の仮称第8は本物の第8波になりかねません。
前前報にて予告しておりました畏友黒木登志夫先生の【変異ウィルスとの闘い―コロナ治療とワクチン】が数日前に中公新書として出版されました。早速読んでみましたが、大変分かりやすく書かれており読み易いので、是非お手にとってご覧ください。更にCOVID-19 TK-File(39)も届きましたので、このコロナ情報36も、この2資料を全面的に参考にしています。
DNA分析から変異ウィルス株で見ると、オミクロン株からの変異亜株で、第6波、仮称第7波はBA.1,BA.2であったが、WHOは最近の増加がBA.4、BA.5らしいといっていますが、日本の第8波は日本独自の亜株ではないかともいわれています。これらの亜株はワクチンが効きにくいのでは、とも言われています。感染力はウィルス史上麻疹や水疱瘡に次ぎ、3番目の強い感染力を持っており、幸いに重症化、致死率はデルタ株より低いのですが、高齢者では致死率3.5%と高く、私ども高齢者には恐ろしいことです。
ウィルスの中でもコロナウィルスは変異し易く、これまでの第2波、第3波、第5波は日本で独自に変異した亜株だったようです。日本では厚労省がデータを囲い込み、大学や研究所に公開していないため分析が遅れてしまいます。今が大事な時であり、何時でも何処でもPCR検査を積極的に行い、陽性者に関しては全例DNA分析を行うべきだと主張してきました。 抗体についても、アメリカでは過半数(小児では80%)に抗体が見られたと報告されていますが、日本ではこのようなビッグデータが存在しません。 政府はこうした医学的、科学的な面は一切無視して、マスクなしの条件だの、海外観光客受け入れだのと、経済活性化のみ重視して前のめりです。今後どうなるのでしょうか。
黒木氏はチャーチルから始まった “終わりの始まり”を使って今後の経過予想シナリオを
- 終わりの始まり
- 始まりの終わり
- 終わりなき始まり の3シナリオとして考えています。
- 1の場合でもこの後小さな波はあるかもしれませんが、一応納まって行く傾向で、インフルエンザ並みとなる可能性があります。すでにコロナ情報でも書きましたが、SÀRS、スペイン風邪、デルタ株の第5波のように終息に向かう可能性に期待が持てます。いけるのではないかと希望的観測をしております。
- 2の場合、今後も波は繰り返すことになりますが、致死率は高くなることはないでしょう。第3波の5%から第6波は13%に下がっています。
- 3の可能性は大きくないと思われますが、高い致死率を持った波が繰り返すことになります。
シナリオ①が本命だとは思いますが、では何もしなくてよいのでしょうか。 この波の中で感染することの無いようにマスク・換気・大声会話・雑踏回避・近接回避などの基本には十分注意しましょう。
大切なのはワクチンです。時間が経って中和抗体が下がっても、ウィルスが入ってきたとなればメモリー細胞が働きキラー細胞により免疫活動が再び活発化します。ワクチンは基本は2回接種ですが、補助的(ブースター)効果が証明されていますから3回目接種が常識化しています。これによりデルタ株で90%、オミクロン株で65%に回復します。インフルエンザワクチンより優秀です。 さらなるブースター効果として4回目の接種が今始まろうとしています。まだ接種券は来ていませんが、私は受ける日を心待ちにしております。皆さんも受けてください。この次お会いする時は4回終了者同士ノーマスクに戻って会食しましょう。
それなのに何ということでしょう。未だに3回接種者は60%のラインを超えていません。オミクロン株で感染率の高い弱年齢層(12~19歳)のワクチン3回接種は21%に過ぎません。小児の接種率に至っては1割台です。
副反応でワクチン反対を煽る報道、街宣車、全く熱心さが見られない政策によるものです。こんなことでよいのでしょうか。副反応とは本来注射を打つことによる痛み、発赤、腫れ、発熱、倦怠感などであり、いわば必然的ともいえるもので、接種を忌避する理由になりません。副反応が出ればそれに対応するよう手配されていますし、2回目は副反応が強くなる人ならない人半々ですが、3回目は多くの人が軽くなっています。
副反応に混同されているのが有害事象と呼ばれる病態で、アナフィラキシーショック(1)、血栓症(2)、心筋炎(3)、抗体依存性感染増強(4)、不明急死(5)です。(1)は接種現場でもこれには最も注意しており100万回に3人と稀で、死亡者はありません。(2)は100万回に1人と更に稀で、日本ではゼロです。(3)は若い人に見られ、CDCによれば100万回に12.6人とされていますが、時に高齢者に起こることもあります。(4)は新ワクチン誕生の時最も心配される病態ですが、新型コロナワクチンではゼロでした。(5)は高齢の循環器疾患患者で日本で17例とされていますが、元々の循環器病と重症度をしっかり検討せねばなりません。
こうしてみるとワクチンに反対する人の根拠が薄れてゆきます。心理的大きな要因は子宮頸がんに対する神経系の有害事象の報道で、集団訴訟となったことでしょう。メディアの力は大きく、さらに政府は薬害を否定する一方で、ワクチン接種推奨を中止してしまったのです。道理が通りません。接種率は80%から0.1%になってしまいました。コロナ禍を受けて推奨しかけていますが、日本人の心の中に反ワクチン感情を根付けてしまいましたので、ワクチン信頼度はなんと世界149か国中149位と最下位となってしまいました。予防注射をするかしないかは個人の自由でしょうか。憲法でも生命権と公共の福祉は自由を制限するものとしており、公衆衛生の保全は公共の福祉に含まれると黒木氏も指摘しています。なによりも厚労省は大量のワクチンを捨ててしまうというとんでもない失敗を反省し、ワクチン接種に真剣になってもらわなければなりません。
KWVOBの皆さん 山行、ハイキング、スキー(今は無理でしょうが)、あるいはゴルフ、釣りなどは上記の注意をした上で、解禁として可いと思います。会食も可で構わないと思います。店側としては当分の間アクリル板が立つことにはなるでしょうが、そこは我慢し大声を出すことも控えましょう。コロナ禍で日本の社会からコミュニケイションが希薄化してきたと思います。WEB会議など、コロナ社会で新しく開けたメリットもありますが、ノスタルジアでなくプレコロナの良さをもう一度思い直してみましょう。