名前だけは知っていたが今まで見ることなく来てしまった作品である。西部劇映画というものはもちろん範囲が実に広い。勧善懲悪、ガンプレイ、大西部の自然、フロンティアスピリット、などといったものを真っ正直に取り上げたいわば正統的作品と、場所と時間をアメリカ西部にもとめた野放図な活劇としてマカロニウエスタンがあり、その間にたとえば先住民族問題とか自然破壊へのプロテストとかいろいろな現代の視点から見たことをテーマにした作品がある。そういう目で見てみると、グレゴリー・ペックの出演作には 大いなる西部 に代表される正統的作品もあるが、ひとひねりしたものが結構ある。例えば 勇者のみ なんていうのは西部劇としてよりも心理劇みたいな要素が多かったし、この 無頼の群 もわかりにくい作品だった。
クレジットタイトルに リー・ヴァン・クリーフ とか ヘンリー・シルヴァ なんて名前が出てくればこれで敵役がだれかはわかってしまうし、導入部のセリフからもペックが復讐のために人探しをしていることは明らかだった。だが見ていくうちにどうも腑に落ちないことが次々に出てきた。まず、4人を脱獄させた男とこの4人とはどういう関係だったのかがわからない。追い詰めていって対決していく3人のペックの質問に対する答えがどうも嘘だとは思いにくいし、最後のどんでん返しで金を盗んだのが隣人だったことがわかるのだが、ペックに4人組のことを教えたのはこの人物しかなさそうだ。もしそうだとしたら、小屋へ彼らが現れたときにお互い、顔はわかるはずなのに全く知らなかったのはなぜだ。ペックの大金を奪ったこの男は大金を手にしたのになぜこの小屋で貧乏暮らしを続けているのかも不思議だ。
この映画の邦題の 無頼 というタイトルから、当然の成り行きとして4人の悪漢と正義の闘いだろうと思い込んでしまうのだが、原題の Bravados という単語には 威張りたがり、とか、向こう見ずとか、空威張り、などという意味はあるが、善悪の分別は入っていないはずだ。4人が悪者であることは当然なのだが、なぜ このようなタイトルがついているのだろうか。もしかすると結局は自分の思い込み(うその情報だったことは確かだが)によって間違った人間を殺してしまった、いわば独りよがりにすぎなかった行為のことを指しているのだろうか。そうならば対象はペックのことになるのだろうが、Bravados と複数形なのはなぜか。プロフェッサー小泉の解説によれば、”実情を知ら
(34 小泉)
「地獄への道1939」「拳銃王1950」のヘンリー・キング監
相手をする俳優が夫々名の売れた男女優で、昔馴染みで、妻との子
ある町で、4人組が逮捕され処刑されることを知ったペックが、1
(44 安田)
小泉さん、いつもながらの名解説とご感想に感心いたしております。観た映画の印象と輪郭がはっきりとして、映画を反芻して楽しませて頂きました。同時代の映画と出演俳優の付帯説明も大変貴重でとても価値ある情報です。
妻が殺され自宅から盗まれた金塊入りの袋が、良い隣人だと思っていたバトラーが所有していたことが判明し、お門違いの犯人探しになってしまう筋書きがこの映画の味噌でした。共演した女優ジョーン・コリンズは英国出身だけあって、ブルーネットの髪で、ジーン・シモンズ、エリザベス・テーラーを少し彷彿とさせました。「ベン・ハー」での戦車競走が忘れがたいチャールトン・ヘストンの適役の俳優スティーブン・ボイド、鋭い眼光に鷲鼻が特徴のリー・ヴァン・クリーフが印象的でした。