マカロニウエスタンでは、セルジオ・レオーネに次ぐ名匠と言われるセルジオ・コルブッチの監督による、異色の作品。
先ずは、ロケ先が、マカロニウエスタン特有のメキシコ国境あたりの荒れ果てた砂漠地帯を想定したスペインアルメリア地方でなく、フランスアルプスでロケされたと思われる美しい山岳地方の大自然が背景に広がり、陽が昇る景色や夕陽に向かって馬を走らせる。背景はとてもマカロニウエスタンとは思えない。フランスのエルビス・プレスリーと言われたロック歌手ジョニー・アリディが主人公ハッドを演じ、セリフがフランス語というのも珍しい。
物語りは、銃を持つことを禁じられた町ブラックストーンに、凄腕の拳銃使いのスペシャリストと呼ばれる男ハッドがやってくる。兄チャーリーが銀行から大金を強奪し自分のものにしたと濡れ衣を着せられリンチの上殺されたという経緯を確認するのが目的。そのチャーリーが隠したと噂される大金を手に入れようとならず者達が次々に集って来ての争いが展開される。非暴力主義者のシェリフのガストーネ・モスキン、銀行頭取の未亡人ァージニアのフランソワーズ・ファビアン、メキシコ盗賊のリーダーディアブロのマリオ・アドルフ、ヒッピーの4人等フランスの俳優たちがその演技を競っている。コルブッチ監督は西部劇を現代社会の腐敗や不条理を映し出す暴力的な寓話として描くのが得意だが、町を支配する有力者や善良な市民でも全てが金の亡者で、金銭欲に駆られればリンチで人を殺す。逆に世間から爪弾きされている売春婦、黒人奴隷、墓堀人達の方が良識ある行動をとるということになる。最後は当初盗賊に襲われ、善人と思われたヒッピー4人組がアウトローを気取り、金の亡者たちを裸体で這い回らせる。それにしても100人ぐらい?裸体の這いつくばりには驚かされた。それも脂肪体質のお尻の大集合。
最後の対決がハッドとヒッピーの対決では、少々迫力に欠けた。ハッドは弾の無いピストルしかないものの鎖帷子(くさりかたびら)の防弾チョッキで対決。ヒッピーは、顔面とか頭部を狙えばと思うのだが、射てども射てども倒れず、逆に怖気づき逃げ出して終演。要は拝金主義とヒッピー文化へのアンティテーゼか。
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