”荒野の決闘“ の静かさの後、同じ題材でこんなに違うフィルムになるのか、という見本のような作品だ。”OK牧場の決闘” をはじめいくつかの映画になり、史実としても残っているOKコラル(馬囲い)での撃ち合いも当然出てくるのだが、ここでは “荒野” の時のように中心になるテーマではない。
今回、吹替版だったのでがっかりしたが、逆にいいこともあって、初頭のシーンで人物に合わせて俳優名がスーパーインポーズされて出てきた。そのおかげで実にハリイ・ケリー・ジュニアが端役ではあるが出ていたことを(今回2度目の鑑賞だった)知った。あわててよく見直したが、騎兵隊三部作なんかにでてきた、あの顔つきからは想像もできなかったのは、やはり年月のなせる業だろうか。もうひとつ、サロンで歌い手が出てくるシーンもよくあるが、大抵はすぐ画面が変わってしまい、最後まで聞くことはまずない。ところがこの作品では歌手が珍しくも全曲歌い終わるまで出てきて、それが実に小生の愛唱歌ナンバーワンの Red River Valley だった。これも第一回に見たときには記憶になかった。感激。
オープニングの解説(ロバート・ミッチャムだったそうだ)で、当時西部には悪漢の集団、いわば現代のギャング団のはしりみたいなものがあった、とあり、それとの対決がむしろメインになった、いわば典型的ウエスターン仕立てになっている。OKコラルの話も当然だが、アープ一家が闇討ちにあったりするのも事実で、かなり史実に忠実に作られているということである。
再度見てみると、これはドク・ホリディを演じたヴァル・キルマーが主演、という映画であり、ワイアット・アープはむしろ助演という感じであったし、”荒野“ ではOKコラルで殺されてしまうジョニー・リンゴとの対決(アープはリンゴには勝てない、と知っていたホリディがアープに黙って替え玉で、という筋書き)は迫力があった。そのあとの、史実にはあるということだが、悪玉集団の掃討シークエンスは余計だった。OKコラルのシーンもリンゴとの対決もそのほかのガンプレイシーンは名手の神業みたいな射撃なんかではなく、近距離からとにかく撃ち合う、という泥臭い演出だが、現実の拳銃の撃ち合いでは、数メートルくらいにならないと的には当たらないらしいので、このほうが事実なのだろう。
肺病やみのホリディはコロラドの療養所で病死するのだが、”OK牧場“ ではそのホリディ(カーク・ダグラス)をアープ(バート・ランカスター)が最後に訪れる。同じストーリイが今回も挿入されている。これが ”OK牧場”では単なる逸話にすぎない印象だったが、このシーンもキルマーの残す余韻がよかった。
またマイケル・ビーンが演じたリンゴ・キッド、あるいはジョニー・リンゴも実在の人物であることは9月2日付エーガ愛好会(17)で触れておいた。しかしこの役のはまり役は “OK牧場の決闘” のジョン・アイアランドだというのが僕の主張である。