80年代、僕らがサラリーマン真っ盛り、方や世界情勢が冷戦構造で回っていたころ、いろんなうっ憤を晴らすはけ口の一つがその頃台頭してきた新進作家の一連の冒険小説だった。このころの小説のテーマは、今日のようにドラッグとかムスリム問題ではなく、国際紛争とかまだ色濃く残っていた第二次大戦の傷跡と言ったものが多かった。勝手に思い出すに、ロバート・ラドラム,トム・クランシー、フレデリック・フォーサイスなどがいて、すでにベテランとしての地位を築いていたジャック・ヒギンズなどと読み比べたりしたものだった。ヒギンズにはヴァルハラ最終指令 と サンダーポイントの雷鳴 という2作がこのあたりのうわさや史実をもとに書かれている。
これら一連の作品の中で、しばしば顔を出したのが旧ナチ・ドイツのいわば負の遺産だった、ユダヤ人に対する人道的犯罪が国際的なグループによって追及され、ドイツを逃れて潜伏していたナチの旧幹部らが発見された、という記事もたびたびあった。当時売れっ子だった落合信彦によれば、彼らはなんとバチカンを後ろ盾とする秘密の工作によって、瓦解寸前のドイツを脱出、南米にいる、ということで、彼の著作には実際にその潜伏の現状を取材した、とするものもある。ただこの人の記述には明らかな創作あるいは歪曲があるとして、毀誉褒貶、なかばというのが現実だ。ただ、彼の本の中に 2039年の真実 というのがあって、米国の国内法の規定によって、その年まで公開することができないケネディ暗殺事件の真相が公開される、というのがある。小生がそれを読むことはまずありえないのが残念至極ではあるが。
この一連の流れの中で、オデッサ という組織があった、という話が出てくる。この組織の存在そのものについても疑義があるようだが、わがウイキペディアは明確に 存在した、と記述している。 オデッサ とは ドイツ語の名前で、 Organization Der Ehemaligen SS-Angehorigen (旧SS所属者のための組織)の頭文字である。単に Odessa と言えば安田君が後述するように、ウクライナの主要な都市のひとつであり、調べてみるとアメリカには同じ名前の都市が7つ、存在する。おそらくウクライナ近辺からアメリカに渡った移民の人たちが創った街ではないかと想像するが、フォーサイスは(原文は覚えていないが)ヒット作の一つである オデッサ・ファイル の冒頭に、この題名はこれらの都市の名前とは関係ない、と明記していた。
さてこの SS というのが肝で、長くなるのでドイツ語名は省略するが、親衛隊、というヒトラー直属の組織で、最盛期には125万人の規模であったという。中には西欧第一の武力組織だったとされる武装SSや、ヒトラーに最も近い存在だったという突撃隊SA そのほかがあり、有名な情報組織と警察権をもって人々を震え上がらせたゲシュタポとで、ヒトラーの独裁政権の実行部隊であった。これらの組織こそ、ヒトラーの妄想であるユダヤ人種抹殺計画や強制収容所の運営に当たっていたとして、戦後、人間の尊厳に対する罪 に問われ、多くが逮捕処罰を受けた。ODESSA は此の対象となるSS幹部を国外に逃すための組織であった、ということである。
前述したヒギンズの サンダーポイントの雷鳴はその中でも大物中の大物、マルチン・ボルマンのベルリン脱出から始まる話で、当時英国の指導部にはナチと通ずるものがいて、旧悪の暴露に直面する、という話である。英国出の親独派は、ヒギンズの出世作 鷲は舞い降りた や ウインザー公略奪 にも重要な役目を果たす。このあたり、欧州の仕組みというか歴史は誠に面白いものがある(少し前の本稿で ダブルクロス という本について書いたが、これに述べられている史実もまさに奇々怪々、という部分が多い)。
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アメリカン・ニューシネマの代表作「真夜中のカウボーイ」でダス
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(43 保谷野伸)オデッサ・ファイル、ビデオで観ました。ナチ親衛隊の残党を追う
私は、この映画も、フォーサイスの小説も全く知識が無く、白紙の
ただ、結末もあっけなく、ヒチコック映画と比べると、少々物足り