エーガ愛好会 (1) “赤い河” をめぐって

事の始まりは月いち高尾の帰途、川名君との会話から始まった、”エーガ” 談義である。たまたまこの記事が小泉さんの目に留まり、お互い,懐かしいエーガ(どうも映画、という気がしない)の時代の話を始めた。小泉さんとは小生にとっては鬼の3年生、現役時代、ワンデルングで何回もご一緒しているのだが、エーガファンであることは全く知らなかった。

いっぽう、コロナ騒動の少し前、会社時代の同僚で時々本稿に投稿してくれている五十嵐恵美が訪日してくることになり、小生がその世話役になった。結局、コロナ問題で恵美の来日は延期になったのだが、この準備で幹事役をやってくれた、かつて小生のセクレタリだった金藤泰子とメールのやりとりを再開、その延長でこれまた彼女のエーガ愛好ぶりが判明。また普通部高校を通じての友人で小生にそもそもミステリとか映画の楽しさを教えてくれた菅原勲、KWVでは後藤三郎とか最近は安田耕太郎、相川正汎などといったところがメール交換の仲間に加わった。KWV以外はお互い、当然面識もないのだが、このような機会でつながりができる、というのは正にSNS時代の産物でもあり、ある意味、にっくきコロナもそのきっかけと言えるのかもしれない。そのうち、”不要不急”でも外出できるようになったら、ぜひともみんなのご対面を実現したいと思っている(本稿でもご紹介したが、掲載投稿がきっかけになってーこれまた小泉さんが主役なのだがー小生横河電機時代の親友、舟橋利信、47年卒の関谷誠、という3人に共通の話題があることがわかり、一夜、居酒屋で痛飲した実績がある。こういうのを気障にいえば セレンディピティ、というんだろうな)。

とりあえず第一の話題は今は少数派になってしまったが西部劇の話、それからエーガファンなら必ず話題になる、トップシーンとエンディングの論議、はたまた永遠の話題だろうが、自分が好きだったスターの話などなど、まあ、若い人、たとえば川名君あたりにすれば老人のたわごとにしか聞こえないはずだが、そんなことをやっている。このメールのやり取りを金藤がいみじくも映画愛好会(彼女はエーガとはいわないのだ)と名付けた。自粛疲れをいやすことになるかどうか、いくつかの話を(ご本人には許可をもらっていると勝手に思っている)メールのやりとりでご紹介したいと思う。ほかにもご参加いただくことがあればうれしいことだ。

なお、時々画像を転載するが、金藤のアドヴァイスでブログに載せていいものかどうか調べてみた。小生の理解では、その写真がメインではなくあくまで本文に必要な ”引用” で ”引用もと” が明記され、かつ、すでに一般に公開されているもの(したがってグーグルやウイキペディアからの転載は問題ないと理解)であれば著作権の問題はなさそうである。本稿転載の2点はグーグルで公開されているものの引用である(念のため、現在金藤に教えてもらった機関に問合せをしている)。

*****************************

(BS103チャネルで西部劇が連続して放映された前後のやりとり)

(中司)今日13時、BS3チャネルで 赤い河 をやっていました。この映画がハリー・ケリー・ジュニアのデビュー作でした。ハリー・ケリー本人もいい役で短時間でしたが出ていたのを確認しました(アビリーンでクリフとから牛を買い取る役)。

(小泉)赤い河は勿論、西部劇の中でも大叙事詩的開拓劇の 模範ともいうべき作品ですから大好きな方です。初めて初老に扮したジョンウエインが、苦い過去の思い出からか、よじれた性格の持ち主として描かれ、捜索者と似たようなイメージを思いました。言われてみれば、主題歌が、リオブラボーのライフルと愛馬の原曲だったのですね。黄色いリボンに出ていた女優ジョーン・ドルーが、モンゴメリークリフトの恋人役で出ていたことを思い出したら、急にジョンウエインの恋人だったゲイルラッセルの清純だが、ひきつけてやまない眼付きとかを
また思い出してしまいました。ついでに、去る3月10日、ロックハドソンとカークダグラスのガンファイターに出ていたドロシーマローンが、またゲイルラッセルをより色っぽくした女優で、西部劇に良く出演していたことを思い出してしまいました。

(中司)ゲイリー・ラッセルはあまり印象にありませんが、ドロシー・マローンは僕も好きなひとりでした。だいぶ前のテレビの連続もの、ペイトン・プレースにでてましたよね? 西部劇は沢山ありますが、テーブルロックの決闘 を覚えています。たしか男役は珍しく主演を張ったリチャード・イーガンだったと思いましたけど。

今回、終わり近くになって、バックに流れるテーマ曲が、 Red River Valley と並んで僕の愛唱歌である My Rifle my pony and me  (これもウエインの代表作 リオ・ブラボー で、ディーン・マーティンが歌いリッキー・ネルソンがギターを弾く、なんせ、いいんである)と同じことに気がついた。そこで終わった後、何もあるまいがダメモト、とおもいながらグーグルに ”Red River, My Rifle and Me” と入れてみたら、なんと!一発でアメリカ人の女性が同じ質問をしていて、その道の専門の人が明確に答えをだしているではないか。この広い世界で同じ経験をした人がいるということもうれしかったが、この解説によると、この2本は主演ジョン・ウエイン、監督ハワード・ホークス、音楽ディミトリ・ティオムキンという共通点があり、1959年に作った ”リオ・ブラボー”にティオムキンが原曲をそのまま使ったのだそうだ。

(金藤)My rifle, my pony and me という歌を知りませんでしたのでYouTube で聞いてみました。 Film appearances の中に、「赤い河の谷間」が流れた西部劇がたくさん載っています。「怒りの葡萄」の中でも流れていたのですね。作曲者不詳のアメリカ民謡で、歌われていた場所により題名が異っているようですが北部のネィティブアメリカン発祥説が多いようです。

”赤い河” 原題 Red River

ジョン・ウエインの代表作のひとつで、オールドファンとくに女性に圧倒的な人気のあった、モンゴメリ・クリフトが初めて出演した西部劇である。歴史的背景としては、テキサスから肉牛を中部の消費地まで届けるため、チザムという男がテキサスからカンサスまでトレイルを開拓した。このチザムトレイル(と想定される、映画ではあきらかにしていない)をウエインとクリフト指揮のカウボーイ群がたどった話である。やはりウエイン主演で チザム という活劇ものがあり、これも早晩、BS103 に登場するだろうと心待ちにしている。この話には、実在の人物であるビリー・ザ・キッドが登場し、リンカーンウオーとよばれた大騒動を引き起こす。シリアスな赤い河と違って、あっけらかんとした娯楽大作である。

”赤い河” の Red River と Red River Valley は同じものか?

1.北アメリカ大陸に Red River という河は2本存在する。うち1本はミネソタ、ノースダコタのあたりから始まり、北上してカナダを流れる。この流域には開拓初期、レッドリバー植民地という地域があった。2本目はテキサス、オクラホマにまたがるミシシッピーの支流である。

2.西部開拓時代、牛肉は主として中部諸州から提供され、テキサス牛(ロングホーンと呼ばれる種類)はまだ流通していなかった。一方、大陸横断鉄道が徐々に伸び、カンサスあたりまで敷設されるようになり、ジェシー・チザムによってテキサス南部からカンサスまでのトレイルが開かれた。この道をたどって、テキサスの牛をカンサスまで運ぶという冒険がはじまった。

3.映画 ”Red River” はこのチザムトレイル開拓史をベースにした物語であり、その脚本のベースになった記録もあるのでこのような話は史実として裏書される(これによって成功者となったチザムを主人公にした単純明快勧善懲悪なウエイン作品が前述した ”チザム”(1970年)である。

4.ま、ほかの俳優ならわからないが、ジョン・ウエインが come and sit by my side if you love me,  なんていうシーンは想像もできないし、僕が思い込んでいる Red River Valley  はどう見てももっとロマンチックな場所であってほしいから、たぶん、上記1番目のレッドリバー植民地であるのだ、と結論したい。

******************************

今回の結論。西部劇、というだけでそっぽを向く人が多いのもよく知っている。文句を言う前に、先ず、この映画をみたまえ! DVD1本、自粛費用としては安いもんだぜ。