「戦う幌馬車1967」監督バート・ケネディ、主演ジョン・ウエ イン、カーク・ダグラス、が制作された1967年は、「俺たちに明日はない」「卒業 」が公開されたニューシネマ元年であり、「荒野の用心棒」の始まるマカロニウエスタン の洗礼を受け、西部劇も古典的な勧善懲悪から脱皮せざるを得ない時代だったが、こ れは古き良き時代の単純明快なるB級西部劇に戻ったような、軽快でユーモアもブレ ンドされた映でそれなりに楽しめた。
ジョン・ウエインが無実の罪に陥れられ、3年のムショ暮らしから の仮釈放で、土地までも奪った悪党ブルース・キャボットに、一泡吹かせようとキ ャボット経営の会社が金鉱から砂金を運ぶ装甲馬車を襲う計画をたてる。冒頭その装 甲馬車が、30人の部下と共に疾走する様子は豪快そのもの。ロケ地は、メキシコのデ ュランゴとのことだが、モニュメントバレーより奇異な美しくそそり立つ岩壁が背景 。音楽は、あの「真昼の決闘」のディミトリ・ティオムキンで、心地よい歌が流れ 、Sung by EdAdamsとクレジットされていたが、小生は知らない歌手。
50 万ドルの砂金を運ぶその装甲馬車、題名の幌馬車と言うよりは駅馬車のように見えるが、脇 には鉄板を張りめぐらし、上面にはガトリング銃の銃座を設置した戦車のような凄ま じい馬車だ。一人ではとても対抗できないとウエインは4人の仲間を募る。
先ずは、カーク・ダグラス、悪党キャボットがウエインを殺せる唯 一の男と断じた早撃ち。「11人のカウボーイ」で、ウエインを殺した悪役で知ら れるブルース・ダーンも冒頭でウエインを撃とうとしたが、簡単に殺されてしまう。ダ グラスは長寿103歳で亡くなったが、「チャンピオン」「炎の人ゴッホ」「スパルタ クス」等の大物俳優で、多くの西部劇でも主役を演じてきたが、意外と他の大物俳優 との対での共演が多い。「OK牧場の決闘」でバート・ランカスター、「ガンヒルの 決闘」でアンソニー・クイン、「ガンファイター」でロック・ハドソン、「大西部 の道」でロバート・ミッチャムと。灰汁(あく)が強いところもあるが、意外と相 手を立てることも心得ていたようだ。今回もウエインを立てながらもヤンチャで抜け 目なく軽業的芸や肉体美を披露していた。
“見知らぬ乗客”での存在感が記憶に残る、ウオーカーシニア 爆弾専門のロバート・ウオーカーjrは、ヒッチコックの「見知ら ぬ乗客」や「愛の調べ」のブラームスを演じたロバート・ウオーカーとあの「聖処女 」「慕情」のアカデミー女優ジェニファー・ジョーンズとの長男。あまりに父親そっ くりで、jrが付かなかれば、jrとは思えない。先住民族で怪力無双のハワード ・キールは「ショウボート」「キスミーケイト」等のミュージカル映画で名を馳せた。 欲張りで、ロバート・ウオーカーjrが惚れてしまう若い女を妻に持つキーナン・ウ インは名脇役100本以上。この4名のほか、銃弾や毛布、塩の提供を条件に先住民族まで味方につける。
大型ミュージカルでおなじみだったハワード・キール 結果は先ずはめでたしめでたしなのだが、味方の筈の先住民族が寝返る理由が判らないこと、追跡のスリルと装甲馬車からのガトリング銃の効能 の犠牲者にさせられたのか。また30人の部下が橋の爆破で遠回りをさせられるが、 戦わずに終わるのも判らない。この二つのことが理解不能で、腑に落ちないことだが、 単純に楽しく観た。
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