マリー・ローランサン展のこと   (普通部OB 舩津於菟彦)

如月と言う言葉は口に出すと何となく乙女チックな香りがしますね。もう最後の日曜日。弥生三月も直ぐ。

マリー・ローランサンは高校の頃から好きで当時のブリジストン美術館へ拝見に参り、「乙女チック」な繪にすっかり魅了されました。独逸国籍の男爵夫人になったが、結局パリに戻り当時画壇に旋風を巻き起こしていたキュービズムの人々と交流を深めましたが、その中で女性としての特色を出さないと相手にしてもらえない。そんな中フジタ同様にブルーを主体とした淡い色彩の絵で貫きました。先日の国立西洋美術館の「キュビスム展」のマリー・ローランサンの「アボリネールとその友人たち」の絵には驚いた。キュビスムにさらされたマリー・ローランサン。そしてアポリネールとの激しい恋。そんな繪とは知らず拝見していました。後の有名な詩「ミラボー橋」が創られたのはこのころのことなのでしょう。

マリー・ローランサン(1883-1956)は、20世紀前半に活躍した女性画家です。キュビスムの画家として紹介されることも多くありますが、「前衛的な芸術運動」や「流派(イズム)」を中心に語る美術史の中にうまく収まらない存在です。ローランサン自身は、自分に影響を与えた存在として、同時代の画家マティス、ドラン、ピカソ、ブラックの名前を挙げていますが、彼らの様式を模倣することなく、パステルカラーの独自の画風を生み出しました。彼女は同時代の状況を見つつ、時代の要請を理解して、自らの方向性を模索しました。

マリー・ローランサン(1883-1956)は、パリのアカデミー・アンベールで学び、キュビスムの画家として活動をはじめました。1914年にドイツ人男爵と結婚、ドイツ国籍となったため、第一次世界大戦がはじまるとフランス国外への亡命を余儀なくされました。1920年に離婚を決意して、パリに戻ってくると、1921年の個展で成功を収めます。第二次世界大戦勃発後もほとんどパリに暮らし、1956年に72歳で亡くなるまで制作をつづけました。

キュビスムの画家として活動していた初期から最晩年の大作《三人の若い女》や、この詩は有名ですがどうやらアポリネールがマリー・ローランサンに恋して失恋の詩のようですね(フランス語堪能の方むけに欄外に)。

本展では石橋財団コレクションや国内外の美術館から、ローランサンの作品約40点、挿絵本等の資料約25点に加えて、ローランサンと同時代に活躍した画家たちの作品約25点、合計約90点を展示します。ローランサンの画業を複数のテーマから紹介し、関連する他の画家たちの作品と比較しつつ、彼女の作品の魅力をご紹介します。このマリー・ローランサン展は三月三日の雛祭りまで開催しています。

******************************

Sous le pont Mirabeau coule la Seine
           Et nos amours
     Faut-il qu’il m’en souvienne
La joie venait toujours après la peine

           Vienne la nuit sonne l’heure
           Les jours s’en vont je demeure

Les mains dans les mains restons face à face
           Tandis que sous
     Le pont de nos bras passe
Des éternels regards l’onde si lasse

           Vienne la nuit sonne l’heure
           Les jours s’en vont je demeure

L’amour s’en va comme cette eau courante
           L’amour s’en va
     Comme la vie est lente
Et comme l’Espérance est violente

           Vienne la nuit sonne l’heure
           Les jours s’en vont je demeure

Passent les jours et passent les semaines
           Ni temps passé
     Ni les amours reviennent
Sous le pont Mirabeau coule la Seine

           Vienne la nuit sonne l’heure
           Les jours s’en vont je demeure