80年代東西冷戦時代に亡命したダンサーの話。当時の共産党全盛のソ連から米国
亡命がバレエダンサーニコライ・ロドチェンコ(ミハイル・バリシニコフ)、逆にベトナム介入や人種差別の米国からソ連への亡命がタップダンサーのレイモンド・グリーンウッド(グレゴリー・ハインズ)が主役。
バレーダンサーとして活躍しているミハイルが「若者の死」という舞台で喝采を浴びるところから開幕。その後所属する米国のバレエ団が、公演のため東京に向かうオリエント航空ジャンボ機の電気系統の故障で、折悪しくシベリヤへ緊急着陸。過去ソ連からの亡命の罪を犯したミハイルは、KGB幹部のチャイコ大佐(イエジー・スコリモフスキー)に身柄を拘束されてしまう。その監視役に命じられたのがグレゴリーで、この二人に友情が育まれると同時に、ミハイルの元恋人ガリーナ(ヘレン・ミレン)、グレゴリーのロシア人妻ダーリナ(イザベラ・ロッセリーニ)が絡む。と同時に二人のダンス場面が素晴らしい。グレゴリーの「ポギーとベス」でのタップ、ミハイルの最初の「若者の死」のバレー場面から始まり、グレゴリーと賭けをしながら片足で回転の踊りピルエットを11回やクラシクとタップという全く資質の違う二人が踊るシーン、David PackのProve me wrongという曲にシンクロしながら踊る等ミハイルの優雅さとグレゴリーの長い手足とリズム感が観ているだけで楽しい場面の連続。
二人がトレーニングを兼ねて踊る場面の何曲かの音源は日本製らしきカセットデッキで懐かしい。製品にHitachiの文字が見えた。最後は、米国大使館の協力のもとソ連から自由世界への脱出が、スリル満点でハラハラさせる。高所での宙吊りアクションやその背景の白夜の静まった薄明のロケーションが異様な緊張感を醸し出した。
監督のテイラー・ハックフォードは、2009~2013年全米監督協会長を歴任し、その作品に「愛と青春の旅だち1982」「Rayレイ2004」等がある。脇を固めたチャイコ大佐に扮するイエジー・スコリモフスキーはポーランドの名監督。ヘレン・ミレンは英国の名女優で、1997年に、この映画の監督と結婚している。グレゴリーの妻は、バーグマンの娘イザベラ・ロッセリーニと名優が揃いゴージャスな気品を漂わした。音楽は、バレエやタップがふんだんに流れるほか、アカデミー歌曲賞のライオネル・リッチーの「セイ・ユー・セイ・ミー」、フィル・コリンズ&マリリン・マーティンの挿入歌「セパレート・ライブス」等彩りを添えている。
(平井)私はDVDで見ましたが、面白い映画でしたね。ダンスが素晴らしかったです。もう10年ぐらい前になりますでしょうか、バリシニコフがパリで踊ったのですよ。もう流石に若い頃の回転はできないのですが、その表現力は涙が出る程素晴らしかったです。会場はスタンディングオベーションで、お花が舞台に投げられて、それを拾う彼のしぐさがまた美しい!忘れられない舞台でした。シャトレのパリ市立劇場でした。
(安田)封切り当時、映画館で観ました。冷戦時代の米ソの対立を背景にして物語は進みますが、ストーリーそのものに加えて、二人の踊り場面、特にバリシニコフの、が忘れがたい。バリシニコフは実際ソ連からアメリカへ亡命したバレー界の至宝でした。ライオネル・リッチーの「Say You Say Me」は映画のみならず、当時よく聴きました。
https://youtu.be/L79ZKIvHEa8
フィル・コリンズ & マリリン・マーティンの「Separate Lives」も良かった。
https://youtu.be/vmMinSOWKQk?t=5
ついでですが、ライオネル・リッチー以下当時のアメリカを代表する歌手たちによって歌われた「We Are the World」が好きでよく聴きました。今聴いても素晴らしい。冒頭、リッチーが一番手で歌い出します。アフリカの飢餓と貧困を解消する目的で「USA for Africa」というプロジェクトを立ち上げ、作られたキャンペーンソングで、作詞・作曲はマイケル・ジャクソンとライオネル・リッチーが共同で行い、プロデュ―スはクインシー・ジョーンズが担当。クインシーは映像動画では指揮を担当しています。
関連