エーガ愛好会 (171) 追跡  (34 小泉幾多郎)

この「追跡1947」の監督ラオール・ウオルシュは、西部劇からギャング映画、戦争映画といった男性的な骨っぽい秀作が多いが、これは時代感覚が鋭い、所謂サイコウエスタンの先駆的作品で、ニーヴェン・ブッシュの脚本に、大いに助けられてもいる。主演のロバート・ミッチャムが、あの何を考えているのかわからないような個性が、この作品に合致していた。

冒頭ニューメキシコの岩峰がそそり立つ一角を女性一人馬を走らせ辿り着いた場所が、住んでいた形跡のある牧場跡。エイガは此処で始まり、此処で終わる。この地がそもそも主演者ミッチャムが何故追われる身となったのか、何故彼を悩まさせるのか、随所にインサートされる走り回る銀の拍車とブーツの足元のイメージは何故なのか、謎めいた導入部が興味を駆り立てる。

主演ロバート・ミッチャムが若き頃から、その個性を発揮、テレサ・ライトは、流石のアカデミー受賞女優で有名作品出演の貫録を示し、もう一人の主演者ジュディス・アンダースンは「レベッカ」のダンヴァース夫人の如く不穏の空気を醸し出すのに将に適任。名脇役アラン・ヘイルの賭博場のオーナー、やさしい男ハリー・ケリー・jr等々俳優にも恵まれた。スタッフ面も音楽マックス・スイナーが既成曲を効果的に使っていた。一家団欒のシーンで歌われた「ロンドンデリーの歌」、ミッチャムが唄うシーンもある。家族に亀裂が入るようになると危険なメロディで流れる。賭博場で演奏された「ラレドの通り」はジェブが馬上で口ずさんでいた。ジェームズ・ウオン・ハウの撮影も素晴らしい。冒頭から、馬と共に歩くソーの背景に切り立った岩山の高さ。同じく馬上のジェブの遥か彼方の山の手に人影が見えるといった大地の地形が効果的に取り入れられている場面、其処から撃ち合いが始まる等々。復讐と執念の重苦しさの溢れた西部劇だったが、最後ジェブとソーの命がけの戦いの末ハッピーエンドに到達し、気分は悪くない。

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”ラレドの通り” 「TheDyingCowboy」としても知られる「StreetsofLaredo」は、死にゆくレンジャーが別のカウボーイに物語を語る有名なアメリカのカウボーイバラード、アメリカ西部作家連盟のメンバーは、これを史上最高の西洋の歌のトップ100の1つとして選んでいる。

As I walked out in the streets of Laredo
As I walked out in Laredo one day
I spied a young cowboy all wrapped in white linen
Wrapped in white linen as cold as the clay

I see by your outfit that you are a cowboy
These words he did say as I boldly walked by
Come sit down beside me and hear my sad story
I’m shot in the breast and I know I must die

It was once in the saddle I used to go dashing
Once in the saddle I used to go gay
First down to Rosie’s and then to the card house
Got shot in the breast and I’m dying today

Streets Of Laredo
ジョニー・キャッシュ · 1965年
Cowboy’s Lament
バール・アイヴス · 1944年
The Streets of Laredo
ジェームス・リーヴス · 1961年