ウンチの話です    (普通部OB 篠原幸人)

毎日うだるような暑さが続いています。皆さん、当然ですが体調には十分気をつけていますよね。コロナ第7波の足音が大きくなってきました。大きな波になりそうですね。コロナにしろ、他の病気にしろ、自分の身体は自分で守る、自分でしか守れませんよ。これは忘れないでください。

前回は血液や尿から「がん」が分かる話をしましたが、思ったより皆さんの反応は少なかったですね。高価で、夢物語と思ったかな? でも近い将来、必ずこの時代は来ますよ。読み直してくださいね。 今日はもっと現実的な、皆さんが自分の大便や尿にどんな注意を払ったらよいかという話をします。

大便や尿は、入院でもしていない限り、皆さん自身以外には誰の目にも触れません。排便・排尿後、自分の身体から出たものを見る権利を持っているのは世界広しといえども、貴方だけなのです。臭いとか汚いとか言わないでください。たった数秒前までは貴方自身の体の中にあったものです。

まず「ウンチ」の形・色を、毎回ジックリ入念に観察する癖をつけてください。お尻を拭いた紙は静かに横の方に落とす習慣をつけてください。理想的な「ウンチ」は、黄色か茶色バナナのような色と形です。まっ黒じゃないか、表面に血は付いていないか、下痢していないか、食べたものがそのままの形で出てきていないか、コロコロして固すぎないかなど、時間をかけて小学生の理科の宿題の時のようによ~く観察してください。自分のお子さんやお孫さんの尿やウンチだと手についても平気なのに、自分の身体から出たものが臭いとか汚いと考えるのは自分の便に対して失礼でしょう。でも、まあ臭いものは臭いやね。

他人の便まで仕事上、観察しなければならない病院の看護師さんたちの気持ちにもなってください。貴方の便の回数や形や色を、特に定期的に外来を受診している方は、訊かれたら、いや訊かれなくてもおかしい時は、医師に報告してください。

 排便は出来れば毎日(週2-3回でも問題ありませんが)同じ時間帯に欲しいですね。しかし、規則正しく毎日決まった時間に起き、食事をとり、仕事に出かけていたころはともかく、引退してだらしのないふしだらな生活に入ると、排便も不規則になることが多いと思います。中には最近、いつ排便したか忘れている人もいます。特に、高齢になると、腸の動きも衰えてくるので便秘がちの人も増えてきます。朝食が終わったら、便が出なくてもトイレに座る習慣をもつのも良いでしょう。無論、寝る前でも結構ですが。

便秘の治療には以前は漢方薬やマグネシューム薬が定番でしたが、今は全く作用機序の違う,クセになりにくい新しい薬も出てきています。便秘がひどい方は念のためかかりつけの医師に一度は相談すべきです。恥ずかしいと、市販の薬だけに頼ってはダメですよ。慢性の便秘から腸閉塞になる人もいるんです。薬以外の便秘の治療には昔から、運動(一日30分または週3回60分以上の歩行)、良質な睡眠、水分や乳酸菌を十分とる事、食物線維を多くとるのが良いと言われています。でも食物繊維を多く含む食事が本当に良いかどうかははっきりした証明はなされていないようです。軽い便秘なら牛乳一杯や夕食時のニンニク2粒で良くなることもありますが。

年をとると大腸のカハール細胞というものが減少します。それが大腸の動きを悪くしている原因の一つですが、以前にお話ししたフレイル・サルコペニア・骨粗鬆症の方も便秘を合併することが多いですね。便がそれほど固くなくても、便を出す力が年と共に低下するのです。下痢や便秘でなくても、便がイカ墨も食べていないのに真っ黒、あるいは真っ白、または血が混じっていることがある方は当然すぐにかかりつけ医に相談してください。但し、貧血のため、鉄剤を常用していると真っ黒な便になることもありますよ。

尿も毎回、色や出方をよく見てください。回数が少なく、色が濃くなっているようなら脱水の兆しかもしれません。水分補給が必要です。肝臓が悪いこともあります。排尿痛は無論のこと、排尿中に尿が何回も途絶える、あるいは尿線は細くなる場合も要注意です。

年をとってからの頻尿にはお悩みの方も多いでしょう。特に夜間、排尿の為に2・3回以上起きる方は、まず両足ふくらはぎに寝る前にシップ薬を貼ってみる、あるいは寝る前に両足に弾性ストッキングを履いてみることから始め、効果がなければ泌尿器科の先生に相談してください。市販の漢方薬がよく効いたという人も中にはいるようですが。無論、濁ったあるいは赤い尿が出ることは、膀胱炎・腎結石や「がん」などの危険信号です。