エーガ愛好会 (116) シノーラ  (34 小泉幾多郎)

1900年のニューメキシコのシノーラという所を舞台に、土地所有権をめぐって繰り広げられるガンマンたちの死闘を描く。あの「荒野の七人」「OK牧場の決闘」等決闘3部作で名高いジョン・スタージェスの監督で、主演がクリント・イーストウッドというのだから期待は高まる。イーストウッドはマカロニウエスタンから帰還して10作目、「恐怖のメロディ1971」で初監督、「ダーティハリー1972」に出演、「荒野のストレンジャー1973」での西部劇初監督を控えての意気軒高の時期だけに、名監督との作品で何かを得たい気持ちがあったのではなかろうか。舞台や主演者から何となくマカロニウエスタン的色彩が色濃く感じられるが、それなりに楽しめた。小気味よい音楽で始まるが、音楽監督が「ダーティ・ハリー」等のラロ・シフリン。背景も素晴らしく、カリフォルニア州ローンパイン(アラバマヒルズ)にロケし、雪を頂く山々に囲まれた岩だらけの風景をブルース・サーティースが撮影と、スタッフはいずれもが一流の顔ぶれで占められている。

権力と結びついた名目だけの保安官(グレゴリー・ウオルコット)と街の支配者ハーラン(ロバート・デュヴァル)たちの気まぐれによって流れ者や弱者が制裁を受けるように、此処シノーラの街でもジョー・キッド(クリント・イーストウッド)は拘置所にぶち込まれた。メキシコ人も自分たちの住んでいた土地を訳の分からぬ理由をつけられ、牧場主たちに奪われてしまったことから、チャーマ(ジョン・サクソン)とその一味が乱入、土地の証拠物件を焼かれた仕返しに書類を焼いて砂塵の中に消える。ハーランは腕を見込んだキッドを含む凄腕ガンマンによる追撃隊を確保しチャーマ一味の後を追う。チャーマがいる岩山に囲まれた山村でのハーランのメキシコ人への迫害ぶりに、キッドは村の娘ヘレン(ステラ・ガルシア)と結託、メキシコ人側につくことに。最後正当な裁判を受けることを条件に、チャーマ、ハーランのそれぞれの一味をシノーラの街へ戻すことに成功する。残念ながら正当なる裁判が開けるような状態ではなく、チャーマ一味とハーラン一味との銃撃戦となる。キッドは列車を暴走させ、酒場にいるハーランの部下たちの中へ突っ込み、浮足立った部下たちをやつけることに。裁判所に入ったハーランに対し、裁判官の席に立ったキッドが、裁判官と死刑執行人としてハーランを撃ち殺すのだった。

雄大なロケーションとガンアクション、高性能ライフルでの遠距離射撃、機関車の酒場突入等クライマックスの見所も多く、イーストウッドの若々しく颯爽とした恰好良さ、ロバート・デュバルの悪役ぶりも堂に入り堪能したが、スタージェス監督の冴えがもう一つでした。イーストウッドからもマカロニ・ウエスタンのセルジオ・レオーネ、「ダーティ・ハリー」のドン・シーゲルのことは恩人ということを聞くが、ジョン・スタージェスについては聞かない。

(編集子)ロバート・デュバル はやはり ゴッドファーザー での初見参の印象が強く、どうもこの映画ではミスキャストではなかったかという気がする。ジャック・ヒギンズの名作 鷲は舞い降りた で準主役のラードル大佐を演じたところまでは記憶にあるが、往年のテレビシリーズ コンバット に出ていたとは知らなかった。ローンパインはカリフォルニア中部のサンジョアキンバレーに位置し、デスヴァレーとかマウントホイットニーなどへの入り口にある街で、パイン(松)は見かけなかった気がするし、むしろ ローン、という形容詞のほうが印象に残った、編集子の印象としては冴えない印象が残っている。