コロナに対する対応について (34 船曳孝彦)

新型コロナ肺炎の第5波の感染拡大は凄まじいまま続いております。決して明かりが見えて来たとは言えません。週内変化がありますので7日単位(あるいはその中の1日単位)で比べないと分かりませんが、まだ増え続けています。当初は高齢者感染の割合が多かったのですが、デルタ株への変異とともに、ピークが50,60歳代に移り、30代、さらに20代へと移行しています。怖いのは感染しにくいと見られていた幼小児の感染が急増していることです。子供の一斉検査で高い率で陽性が認められたとの報道もあります。当然ながら小児への重症化治療施設、設備など全く手が付けられていません。悲劇的な結果となりませぬよう祈るばかりです。

子供たちへの拡大の大きな原因は、大人の軽症感染者の家庭内療養(待機)政策にあります。狭い日本の家屋ですから、感染したお父さんを隔離するなど出来る訳がありません。お母さん、子供たちへと家庭内感染を広げた結果だと思います。昨年のコロナ情報でも述べていますが、感染者が家庭内に留まることは非常に危険です。子供同士の集団感染へと発展します。逆に子供から親への感染ケースも報道されています。子供たちを守るためにも、専用病院、隔離・観察施設の重要性を強調します。

TVのインタビューで「私達は罹らないと思っていた」と答えていた20代の女性がいましたが、街中の人出を見ても分かりますが、緊急事態だ、蔓延防止だなどの制約に全くとらわれずに出歩いていたのでしょう。国のGo-Toキャンペーン、オリンピック実施政策などからは、誤った楽観主義が広まってきたのでしょうが、とんでもないことです。路上飲酒などが放置されているのは、3流以下の国家でしょう。前報でも医療崩壊が始まったと指摘しましたが、やがて患者が病院前に群がり苦しんでいるインドの事情を皆さんTVでご覧でしょう。日本もあのようになりかねません。

◎政治の対応すべき対応

コロナ病棟増設ばかり強調されていますが、コロナ病棟増設はそう簡単には行かないのです。政治的プロパガンダの色彩が強いのですが、施設の広さ、設備、医師・看護師・技術者などの人材、それら全てが足りていないので、これ以上は無理な要求に近いと思います。一般病棟をこれ以上締め付けてがん、心臓病、外傷などの治療を疎かにすべきではありません。

入院治療のできない患者に観察-待機施設を増設すべきです。中国、米英などで素早く建設されてそれなりに機能したようで仮設病院、野戦病院を日本も見習うべきと言われます。しかし日本の現状では無理と思います。病院としての治療は出来なくとも、毎日診察だけは行い、重症化をいち早く見つけて手配しなければなりません。酸素治療も可能となるでしょう。イベントホールや体育館などを利用すべきですし、昨年から本情報でも主張していたようにオリンピック選手村の活用です。昨年オリンピック1年延期が決まった時点で踏み切っていれば、この1年弱で随分事情は違っていただろうと考えますが、過ぎたことは仕方ありません。信じられないパラリンピックが進行中です。あと1週間、終わり次第直ちに移行すべきです。

新感染者数のカーブは人流のカーブから1~2週遅れてきれいに一致しています。緊急事態宣言はオオカミ少年ではありませんが、完全に機能していません。殊に第5波では、山の日連休、お盆、オリンピック、パラリンピックなどの逆方向政策と重なり、効果がありません。為政者自身が守っていないような会食自粛を唱えても意味がありません。先述のTVの女性の発言などないように、本気で自粛方向に導くべかです。

◎医療側への提言

コロナ病棟増設にご協力いただいている施設にはご苦労様ですとしか言いようがありません。引き続き頑張ってください。

入院施設のない開業医の先生は、軽症患者待機・観察施設への診察、協力をお願いします。医師会として正式に表明すべきです。

眼科、皮膚科など普段感染症に関係していない先生は、ワクチン接種で大いに活躍してください。学校健診などで予防接種はお手の物です。ワクチン接種政策の最初からこのように分業すべきだったのです。

これは政治側かもしれませんが、発熱外来ももっとオープンにどこに行ったらよいのかPRすべきです。

◎皆さんに

 デルタ株は武漢型、イギリス型などとは別のビールスになってしまったかのごとき性格です。感染力は一桁違いますし、対応年齢層も異なってきています。重症化率も明らかに高くなっています。エアロゾル感染で天然痘並みに感染機会があるともいわれます。十二分に注意してください。

とはいえ、新型コロナビールスですからワクチンの予防効果は大いにあります。接種者の感染者は一桁以上低いようですし、重症化率も低値です。接種後抗体は時間とともに低下することをメディアは喧伝していますが、これは当たり前のことで、100%持続するものではありません。また低値となっていても、ビールスが入ってくればブースター効果で再上昇します。早く若い人たちに行き渡って欲しいものです。

今の趨勢ではまだまだ長引くものと思われます。精神的にもつらい毎日ですが、罹らないよう頑張りましょう。