エーガ愛好会(82) ショーン・コネリ―の西部劇   (34 小泉幾多郎)

この8月BSP放映の西部劇は全て昨年の再放映のみだが、BS-TBSで「シャラコ」の放映があり、これが初見のショーン・コネリー主演の唯一の西部劇。007第5作で日本ロケの「007は二度死ぬ」の翌年の作なのに見逃しているとは。大いなる期待をもって観たのだが、残念ながら裏切られたと言っていい。007のショーン・コネリーの西部男ぶりは、それなりに恰好良いところを見せて呉れた。相手役がブリジット・バルドーとは豪華だが、入浴場面とかあるものの、キュートな魅力は都会でないと余り感じなかった。

この二人の魅力よりも、大いに期待したのは、監督がエドワード・ドミトリクだったこと。過去西部劇では「折れた槍1954」「ワーロック1959」「アルバレスケリー1966」等、異色作で内容も素晴らしかったし、西部劇以外でも「ケイン
号の叛乱1954」「山1956」「愛情の花咲く樹1957」等々傑作が多いことから期待大だったのだが。出演者の関係からか、英国映画ということが災いか、先ずは、物語も脚本も陳腐過ぎるのではなかったか。名監督と言えども脚本がしっかりしてなければ、どうにもならない典型。英国の上流階級ご一行様が、趣味のハンティングのため、わざわざニューメキシコまでやって来るという筋立て。そのご一行が、伯爵ペーター・ファン・アイクと妻オナー・ブラックマンや侯爵ジャック・ホーキンスとその愛人バルドー等。やって来た地がインディアン居留地、しかもそれを斡旋したのが案内役のスティーブン・ボイドと脇役人も豪華な顔ぶれが揃う。

居留地での狩なんてインディアンが怒るの当たり前。バルドーが単身狩に出掛け、インディアンに遭遇したところをコネリーに助けられる。このコネリーが白人とインディアンとの混血なのだが、この敵対するインディアンとの関係がはっきりしないことが、最後のインディアンとの戦いにも表れる。しかも案内役のボイドは、馬車を持ち出し金目のものを奪い、他の案内人共々貴族を見捨てて遁走する無責任さ。残された貴族たちは、コネリーの案内で徒歩で逃げることになるが、山登り経験の貴族が、ロッククライミングの技術で活躍するという珍しい場面もある。しかし山へ落ち延びたところへ、インディアンに追いつかれ、最期は首長の息子ウッディ・ストロードとコネリーの一騎打ちに。黒人がインディアンに扮するなんて初めてでは?コネリーの勝利に首長が撤退を約束、コネリーとバルドーは結ばれ終演。全般的に盛り上がらず、西部劇らしい迫力が感じられないうちに終わった感じ。