PALO ALTO という名のワイン

ここのところ酒瓶のラベルについて何度か書いたが、今日、近くのスーパーでなんと PALO ALTO というブランドを見つけてとりあえずシャルドネを買ってきた.チリ産としてはやや高めの値段である。

サラリーマン生活のほぼ全部をHP(ヒューレット・パツカード)で過ごした小生にとってこの地名は特別な意味を持つ。エレクトロニクス業界の巨人を創立したビル・ヒューレットとデイヴ・パッカードがここパロアルトにあるスタンフォード大学で知り合い、卒業後、ヒューレットが開発、特許をもつ低周波信号発生器を200A という製品名で製造販売を始め、この会社を創設した場所だからである。技術の高さと清潔なビジネス倫理で業界に確かな地位を確立したHP社はほどなく小高い丘の上に本社工場を建設する。“ビルとデイヴ” のオフィスがあるこの場所は社員から敬意をこめてOn the hill といわれ、その絶頂期には ”現代のアラビアンナイト企業”と言われた会社の頭脳であり心臓であった。

現在はいわゆるシリコンバレーと呼ばれ、エレクトロニクスとITを中心にした米国の技術センターの一つになった、サンフランシスコ湾に沿って Bayshore Freeway, US101号線にそって広がるこの広大地域は、僕が初めて行ったときはクパティーノからサンノゼのあたりにはまだ果樹園が広がる、北カリフォルニアの沃野の面影を残していた。日本では経験したことのない自然環境とビジネスの結合体のなかで、いくつか、若い夢を見たことが改めて懐かしい。

僕にとってのサラリーマンライフ心のふるさと、であった on the hill, ページミルロード 1501番地 にすでにHPの本社はない。たしかスペイン語で 高い木 ということを意味する Palo Alto の響きがもう一度聞こえるような気にさせた、新しい出会いだった。