米国大統領選挙の行方と次期大統領の今後の政策 (HPOB 五十嵐恵美)

 「大統領選挙の結果は依然不透明な部分があるという報道ですが、不正があったという報道はトランプ側のいわば捏造なのか、真実なのか、そのあたりまでは日本ではあまり伝えられてきません.考えてみればこれは他国の内政問題であり、真偽のほどがわからない情報はせいぜい週刊誌どまりのほうが健全だとは思うのですが、民主の地盤のSFあたりの現在の動向など、教えていただけませんか.」という依頼を編集者より頂いた.米国でも選挙に不正はつきもので様々な報道がされているがその不正を証明する「確定的な証拠がない」というのが現状のようである.不正が捏造か、真実かの議論はさておき、次期大統領の(どちらが就任するにしても)今後の政策に関して、英国紙ガーディアン、米国紙WSJに近日掲載された記事を参考に、思いつくことをまとめてみた.

英国紙ガーディアン(11月18日付)は米国大統領選の結果の統計、推移、および ”Why does it matter?”と称して米国各州の選挙結果のアナリシスを掲載している.早見表、記事共に大変に良くまとまっているので是非ご一読を勧める(下記URL).ガーディアン紙の論評は「トランプ大統領が提起している多州に及ぶ控訴目的は、現実的に考えて、実際に選挙結果を覆すことではなく、不確実性を生み出し、集計プロセスを取り下げ(合衆国最高裁判所に上訴する)ことであるように思われる.但し、集計が進行中であっても(その可能性は低いが、合衆国最高裁判所に上訴できたとしても)、合衆国憲法で大統領と副大統領の任期は1月20日の正午に終了するとされているので、もしその時点で最終結果が得られない場合は、下院議長(本日、11月18日、民主党下院議員により4期目の下院議長を承認されたナンシー ペローシ カリフオルニア州民主党下院議員)が大統領代行になる」と結んでいる.

https://www.theguardian.com/us-news/ng-interactive/2020/nov/18/us-election-results-2020-joe-biden-defeats-donald-trump-to-win-presidency

https://www.theguardian.com/us-news/2020/nov/18/can-donald-trump-stay-in-office-second-term-president-coup

 

次期大統領成功の秘訣

11月17日付のWSJに今後バイデン次期大統領が成功するには「クリントン大統領の例に従い、経済から始まる超党派の協力の分野を見つけていくこと...トランプ経済は非常に強かった為、オバマ大統領は退任してから3年後にその功績を認めた.依って、バイデン次期大統領も超党派性の協力できる分野に力を入れれば、より考え抜かれた貿易政策と不法移民政策により、経済をさらに強くすることができるはずだ.経済が楽観的な予測よりもはるかに速く回復し、Covid-19ワクチンが間もなく入手可能になれば、超党派によるV字型の回復の可能性はある.」と述べている. 

今回、共和党と民主党は非常に異なるプラットフォーム、独自の議題(アジェンダ)を持って大統領選挙キャンペーンを行った.分割された政府を選出することにより、ある意味では米国民は夫々が望むアジェンダを手に入れたようにみえる.

言い換えると、「有権者はトランプ大統領の一見混乱し、無秩序で、その上、粗暴な(政治家には望まれない)スタイルを嫌悪、拒否し、彼の経済政策を支持した.

バイデン次期大統領が就任したとしても、有権者は下院(House)の民主党議員を(Democrats)8名を減らすことによって、サンダース候補者によって代表された、根本的な ”社会主義的” 志向、変革にストップをかけた.民主党が今回のキャンペーンに記録的な8億900万ドルを費やしたにもかかわらず、共和党(Republicans)はジョージア州の1月初旬に設定された2回の決戦投票で少なくとも1回勝利すれば、上院(Senate)の支配権を維持する.上院と下院の支持がなければ、主要な政策を制定する大統領の能力は厳しく制限される.

依って、バイデン次期大統領の公約した、

  1. 4兆ドルの新税
  2. グリーン ニューディール(気候変動と経済的不平等の対処を目的とした米国の法律)
  3. 65歳未満の人々へのメディケアー(合衆国高齢者医療制度)の開放
  4. 法廷の詰め込み(最高裁判事の定員を増やしてリベラル派を送り込むCourt Packing)
  5. プエルトリコとコロンビア特別区を州として認め、政府を拡大し左派議題を実施する

等々、の政策は、上院、下院で承認されるのが大変に困難になる可能性は高い.

「バイデン次期大統領は過激ではなくリベラルの中道にいる.上院での36年間の経験は、立法に対する永続的な支援は超党派性によってのみもたらされることを的確に認識しているはずだ.その彼の本質に任せれば、バイデン次期大統領は共和党と交渉できるはずだ.230年以上にわたって私たちを支えてきた(民主主義の)知恵を、アメリカの有権者達は(新大統領を選択することによって)新大統領が、今後、交渉を重ね、(国のために)正しい選択をすることを容易にしたのではないか.」とWSJは結んでいる.

https://www.wsj.com/articles/clintons-example-for-biden-11605636370?mod=hp_opin_pos_1

選挙当日、11月3日、共和党をサポートする南部に住む友人が「今日は選挙の日です.私の希望は、誰もが選挙の結果を優雅に受け入れ、より大きな利益のために前進し、協力することを学ぶことができるようになることです.」とのメッセージを送ってきた.結論としては、米国のプラグマティズムは米国一般国民の心に健在ということになるのか.