エーガ愛好会(31) 西部魂

(中司)トウムストーン に続いて、ついに(!)テンケーテキ 西部劇エーガ、かの 西部魂 であります。難しい議論なし、悪役は悪役、勧善懲悪、神業的ガンプレイ、あえて”B級“と接頭詞が付く西部劇スター、ランドルフ・スコットであります。ただみればいいんであります。芸術的解釈不要であります。こういう映画を作っていた時代のアメリカ、よかったよなあ。

(小泉) 懐かしき西部劇「西部魂」の初見は、中学時代だったと思う。当時米軍占領下だったから?自国ではテクニカラーで制作されながら、日本封切りはモノクロだった。同様なケースに、「モホークの太鼓1939」「地獄のへの道1939」「スイングの女王1948」等があった。こんな理不尽なことがあったのだった。

ドイツの巨匠フリッツ・ラングの監督、ランドルフ・スコット主演。NHKBSの映画、最近再放映が多いが、この映画の放映初めてでは?数年前か?有料のスターチャンネルが無料放映した際、観た記憶があり、それがカラーでの最初だった。フリッツ・ラング最初の西部劇は「地獄への逆襲1940」で、弟ジェシー・ジェームスを殺された兄フランク・ジェームスが復讐を遂げるという、いわばお仕着せで、腕の見せ場がなかった感があるが、この映画では、ドイツでの名声を垣間みることが出来たし、もう一作の「無頼の谷1952」も同様。

原名ウエスタンユニオンは電信会社。電信をつなぐため西部で働く男たちの話。ランドルフ・スコットは、怪しい過去を持つ男だが、電信会社の技師長ディーン・ジャガーの命を救ったのが縁で、専属ガイドになる。其処へハーバード出身の東部男ロバート・ヤングが電信技師としてやってきて、技師長の妹ヴァージニア・ギルモアをめぐって恋の鞘当てを演じることになる。電信工事の建設現場は種々の困難に遭遇するが、先住民の工事妨害は善良な無知丸出しに終始、これに対し,元仲間のスコットの兄バートン・マクレーン等の無法者たちは、先住民に成りすましたりして建設隊を襲い、キャンプに火を放つ等やりたい放題。窮地に立ったスコットは、汚名をはらすべく兄たちのところへ行き談判するも射ち合いになり、スコットは兄の部下二人を倒すも兄に撃たれ死んでしまう。兄を殺したのは、スコットを追ってきたヤング。

このスコットの死、西部劇のヒーローらしくない。ドイツ人監督フリッツ・ラングは、ドイツ芸術ジーグフリードの悲劇性である死すべきヒーローとだぶらせたらしい。背中に致命的弱点を持ったジーグ・フリードに対し、スコットも火事等で右手に火傷を負っていたのだ。スコットは、西部劇のヒーローを何回も演じ、特に正義と法律を遵守する保安官役がぴったりだった。それでも、この映画のように共演の主役を持ち上げる役回りにも徹しられる好感を持てる俳優だった。例:「スポーイラース1946」のジョン・ウエイン、「ヴァージニアの血闘1940のエロール・フリン、「昼下りの決闘1962」のジョエル・マックリー。

(小川)“古びし我が山の小屋“の原曲がここにあったとは、懐かしい限りです。

(35 森永正幹)私も観ました、ランドルフ スコットは大好きな西部劇俳優だったので。先住民族アメリカインデイアンの扱い方も今ではとても考えられない映画でしたな。
保安官が勤務中にバーボンをぐい飲みしたりポーカーで勝ったり隠れトランプの人達には抵抗感が全くない場面が100年と経たない昔だったのです、ポリテイカルコレクトネスなんて糞くらえ!が7千万越えの得票の裏に有るのでしょう。

(中司ー44 浅野三郎)”エーガ愛好会” で先週BS3チャネルで放映のあった 西部魂 を話題にしています。ストーリーはWestern Unionが西部に電信線を延ばしていく、その途中で例の通りいいやつ、わるいやつが入り乱れる典型的な話なのですが、途中で先住民族(めんどくさいなあ)に電信の威力を示すため、何人かに電線を持たせ、感電させる場面があります。その前に地面に水を撒いてその上に立たせる。触っている連中は大声をあげて騒ぎますがなかなか手が離せなくなって、魔力がある、と思い込むわけです。そこで、疑問。この時期の電信で、電源はどのくらいのものを、何を使ってたんだろうか? 画面には何やら操作盤みたいのものとか、おおげさなスイッチなんか出てきますし、バッテリーらしいものも登場しますが、まだこの時期、交流発電の恩恵はすくなくとも西部の辺境にはなかったはずだよね

(浅野)日本に電信機を伝えたのは1854年のペリー2度目の来日時、同時に電池やケーブル等々も幕府に献上しているので、ダニエル電池を使用した印字式の機器だったようです。米国大陸横断電信システムが開通したのが1861年10月だそうで、「西部魂」が何年代なのか不明ですが、多分電池式だったと思われます。従って、12V~50Vと思われますが?車に使用する24Vでも電流が多ければ人を十分に致死させることができるようですヨ。
(吉田広明 西部劇論 付属年表抜粋 プラス浅野記事参照)
  1789 アメリカ合衆国建国
  1822 サンタフェトレイル開通
  1836 メキシコ領テキサス、独立を宣言 (映画 ァラモ)
  1854 ペルリ提督訪日
  1855 西部辺境警護のため騎兵隊創設
  1860 南北戦争勃発
  1861 ネブラスカ州オマハーユタ準州オグデン間電信敷設  
       (映画 西部魂)
  1865 南北戦争終結
  1867 チザムトレイル開通 (映画 赤い河)
  1869 大陸横断鉄道開通 (映画 大平原)
  1876 カスター将軍の第七騎兵隊、リトル・ビッグ・ホーン
       で全滅 (映画 壮烈第七騎兵隊 小さな巨人)
  1881 トウムストーンでワイアット・アープ、クラントン
       一家と決闘事件 (映画 荒野の決闘 OK牧場の決闘
       トウムストーン 墓石と決闘
  1882 リンゴー・キッド死亡確認 (映画 駅馬車)
(ウイキペディア解説)

ジョン・フレデリック・ダニエル1836年に発明した電池のことで、起電力1.1Vの化学一次電池である。ァレッサンドロ・ボルタ1800年頃発明したボルタ電池はすぐに起電力がなくなる欠点があった。ダニエル電池は素焼きの容器で電解液を分離しプラス側に硫酸銅溶液、マイナス側に硫酸亜鉛溶液を用いることによって起電力の変化が少なく、気体も発生しない実用性が向上した電池となった。

(編集子)小川さんがいわれているように、このフィルムのバックに流れるのがKWVの定番、古びしわが山の小屋 の原曲である。編集子不勉強でこの原曲のタイトルを知らない。ご存じの方、教えてください!